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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
01
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嫌だー! 死にたくなーい! 野垂(のた)れ死になんて嫌だよー!!


 命の危険が現実味を帯びて、恐怖心からたまらず駆け出した。

 さっきよりも必死で、薮と枝が体を傷つける事も厭わず我武者羅に走る。
 何でもいい、自然の世界から抜け出して人の、営みの、文明のある人間の世界を見たくて、宛てもなく前へと突き進んだ。

 改めて方向を確認するとか、そんな事は頭に浮かばなかった。
 今更そんな事しても手遅れで、ただ走って、力尽きるまで前へ進むしか出来る事はなかった。


「誰かーーー! 誰でもいいから、誰か助けてぇー!」



 ―――そんな時だった。



「あ―――」


 緑の視界が晴れた―――。


「あ、はは……」

 森を抜けたその先は別世界のようで…その視線の先には森とは違う別のモノが見えていた。

 そして、それ以上に乾いた喜びが湧き上がるほどの光景がそこにあった。

 そこには町の外周を囲むように石壁が広がっていた。
 丘のようにやや山なりになっている自分が立っている場所からは、石壁の背丈を越えて屋根の数々が見えていた。
 そこで一際大きく存在感を主張する城塞の如き建物が(そび)え立っていた。
 街の出入り口らしき門には、商人らしき人が馬車を引いていたりして、巡回をしている警邏(けいら)がチラホラと見えている。

 遠目からでもそれが都市であり、人が住む世界なのだとわかった。

「やった…やった…街だぁーー!」

 涙を流しながら、脇目も振らずに門へと駆け出した。

 その門の向こうが天国だと信じて疑わず、脳内で何をしようか怒涛(どとう)のようにイメージが溢れてきた。

 屋根のある部屋、温かい布団、美味しいご飯、芳醇(ほうじゅん)な酒!
 何でもいい、どの順番だって構わない…いや、まずはご飯からにしよう!
 普段から自他ともに認めるノロマであるけど、この瞬間だけは結構速く走れている…そんな気がした。

 今は、この衝動的な喜びのまま、一秒でも早く門へと辿り着こうと走り続けた。


 …ややあって―――森の中を走り彷徨っていた所を全力疾走したものだから、死ぬほど息が切れる羽目になった。

「ぜはー…ぜーはー……!」

 し…死ぬ……。

 両膝に両手をついて、大げさなくらいに呼吸を繰り返して、死の淵にいるように思えるような瀬戸際からの回復を余儀(よぎ)なくされた。

 だけど、門にまでたどり着く事は出来た。
 肺が酸素を求めてすごく苦しいけど、それよりも辿り着いた事の喜びの方が大きかった。
 ここまで来れば、ベッドもご飯も屋根も温もりもすぐそこである。

 ―――ヒソヒソ。

 息を切らせて全身汗だくに
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