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嫌だー! 死にたくなーい! 野垂れ死になんて嫌だよー!!
命の危険が現実味を帯びて、恐怖心からたまらず駆け出した。
さっきよりも必死で、薮と枝が体を傷つける事も厭わず我武者羅に走る。
何でもいい、自然の世界から抜け出して人の、営みの、文明のある人間の世界を見たくて、宛てもなく前へと突き進んだ。
改めて方向を確認するとか、そんな事は頭に浮かばなかった。
今更そんな事しても手遅れで、ただ走って、力尽きるまで前へ進むしか出来る事はなかった。
「誰かーーー! 誰でもいいから、誰か助けてぇー!」
―――そんな時だった。
「あ―――」
緑の視界が晴れた―――。
「あ、はは……」
森を抜けたその先は別世界のようで…その視線の先には森とは違う別のモノが見えていた。
そして、それ以上に乾いた喜びが湧き上がるほどの光景がそこにあった。
そこには町の外周を囲むように石壁が広がっていた。
丘のようにやや山なりになっている自分が立っている場所からは、石壁の背丈を越えて屋根の数々が見えていた。
そこで一際大きく存在感を主張する城塞の如き建物が聳え立っていた。
街の出入り口らしき門には、商人らしき人が馬車を引いていたりして、巡回をしている警邏がチラホラと見えている。
遠目からでもそれが都市であり、人が住む世界なのだとわかった。
「やった…やった…街だぁーー!」
涙を流しながら、脇目も振らずに門へと駆け出した。
その門の向こうが天国だと信じて疑わず、脳内で何をしようか怒涛のようにイメージが溢れてきた。
屋根のある部屋、温かい布団、美味しいご飯、芳醇な酒!
何でもいい、どの順番だって構わない…いや、まずはご飯からにしよう!
普段から自他ともに認めるノロマであるけど、この瞬間だけは結構速く走れている…そんな気がした。
今は、この衝動的な喜びのまま、一秒でも早く門へと辿り着こうと走り続けた。
…ややあって―――森の中を走り彷徨っていた所を全力疾走したものだから、死ぬほど息が切れる羽目になった。
「ぜはー…ぜーはー……!」
し…死ぬ……。
両膝に両手をついて、大げさなくらいに呼吸を繰り返して、死の淵にいるように思えるような瀬戸際からの回復を余儀なくされた。
だけど、門にまでたどり着く事は出来た。
肺が酸素を求めてすごく苦しいけど、それよりも辿り着いた事の喜びの方が大きかった。
ここまで来れば、ベッドもご飯も屋根も温もりもすぐそこである。
―――ヒソヒソ。
息を切らせて全身汗だくに
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