暁 〜小説投稿サイト〜
暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
01
[1/6]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話



「はひぃ…はひぃ………」

 鬱蒼(うっそう)とした森、生い茂る(やぶ)、道なき道が広がる緑。
 およそ人が通るために出来ていない自然のフィールド。

 人が通りたければ人が通れるように道を作ってそこを行くものだ。
 そこをあえて通ろうとするのはよっぽどのお馬鹿(ばか)脳天気(マヌケ)命知らず(ドジ)だろう。

 例え冒険者でもそんな事はしない。
 だけどそんな森の中、一人いた。

 というか自分である。

「こ…ここはどこー!?」

 ―――そして自分は絶賛(ぜっさん)迷子中だった。



―――。


 なぜこんな状況に(おちい)っているか…まずは迷子になっている自分の事を説明しなければならない。

 自分は、 レヴァンテン・マーチン―――いわゆる傭兵(ようへい)である。

 ただし…“立派な“、とは付かない。
 傭兵の職が立派じゃない、というわけじゃなくて、傭兵としては酷く…(しつ)が悪かった。

 その結果、この森を進む羽目になっている。
 そして遭難(そうなん)しかけている。

「はひぃ…はひぃ……あぁ、ツいてないよぉ…」

 いくら愚痴を口にしても誰もそれを聞いてくれる人はいない。

 彼は始めから一人でこの森を突き進もうとしていた。
 理由は二つほどある。

 一つは、彼は(ドゥエ)がなかった。
 正確には無くはないのだが、それでも余裕があるわけでもなく、次の稼ぎどころを見つけなければ野垂(のた)れ死ぬのが目に見えていた。
 次の戦場…次の雇い主を探して、大勢の中の傭兵の一人として参加して、最低でも参加分の報奨はもらわないといけないのだ。
 しかし、自分でも何だけど…傭兵歴はそんなに浅くはない。 国々を旅して、紛争の噂のある土地を巡っては傭兵として雇われた。

 だけど、どこでも雇い主の…というより現場での評価はだいたいにしてこうだ。

 ―――役立たず。


 単純にしてシンプルな事に、自分は全くもって強くない。
 それこそ年下の力自慢にすら負けるくらいだ。
 それに加えてドジな上に、ノロマなのだ。 戦場で置いてかれて、孤立して何度も死にそうな目にあっている。

 だから…雇われたとしても、雇う側からすれば『一回で十分』という扱いなのだ。
 強い者、集団で優れてる者、地位がある者などなら雇用は続いたり士官の道もあるのだけれど、自分にそういう評価を得られる事はなかった。
 一回参加すれば次の戦場へ…そういう生活をずいぶんと長く続けている。


 さて、自分がどうしてここにいるのか…そのもう一つの理由がそこにある。


「デ…デトワーズはまだなの〜……?」

 ―――大陸の辺
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ