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SAO−銀ノ月−
第八十五話
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「えっとね、SAO失敗者のこと、話しとこうと思ってさ!」

「俺が勝ってからじゃなかったのか?」

 こちらが聞きたかったことをあっさりと問うてくるリーベに、平静を装いながらそう聞き返す。SAO失敗者のことやリーベのことは、俺がリーベに勝ってからなら教える、ということになっていた筈だったが、と。

「だって……どっちか負けたら、もう喋れなくなっちゃうでしょ?」

「どういう意味だ……?」

「どういう意味って……負けたら死ぬんでしょ?」

「――――」

 ……こちらの問いかけに、リーベはさも当たり前のように問い返してきた。むしろ、こちらが変なことを言っているような、そんな態度。そんなのは……あの浮遊城でしか有り得ないというのに。

「なんて、こっちじゃ普通そんなことありえないよね。冗談冗談」

「普通……はな」

 ――その普通でない事件が起きているから、俺はここに来ているのだから。そして彼女はその踊り子の装束のどこかに、あの《黒星》を隠し持っている……

「何の話だっけ……あ、そうそう! ウチね、お兄ちゃんがいたの!」

「……お兄ちゃん?」

 彼女特有の脈絡のない会話に相槌を打つと、彼女は楽しそうに、嬉しそうに語っていく――この踊り子が、SAO失敗者となるまでの物語を。

「うん、お兄ちゃん。二人ともゲームが好きでさ! SAOが出た時も、兄妹で八方手を尽くしてナーヴギア手にいれたの!」

 かのナーヴギアを不幸にも手に入れた百万人の中の割合は、キリトのような筋金入りのゲーマーだけではなく、ただの少年少女も多分に含まれていた。それは茅場の計画のうちだったかはともかく、リーベたちもそんな少年少女たちの一人だったのだろう。

「でもやっぱり人気で、一つしか手に入れなかったの。だから一つのナーヴギアを譲り合ってやろう、ってことになって――」

 ――最初にお兄ちゃんがログインしたんだ。

「その……兄さんは……」

 あのデスゲームにログインしたが最後、自力でログアウトすることは不可能だった。それは生還者たる自分たちが一番よく知っていることで、大多数のプレイヤーがどうなったかは……誰もが知っている。知らず知らずのうちに震える声で問うと、彼女は変わらず笑顔でそう返した。

「え? 死んだよ、もちろん」

 ……さらに彼女の言葉は続く。そこで俺はようやく、彼女とは分かり合えないのだと知ることとなった。

「――羨ましいよね、生死を賭けた戦いなんて出来て」

「お前は……狂ってる」

 ――理解出来ない存在を前にして、そう言い返すのがやっとだった。それこそが彼女の――SAO失敗者であるリーベの理由。俺にそう糾弾されても、彼女は口笛でリズムをとって笑顔でステップ
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