第八十五話
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用事でもなし、リズベット個人の用事が優先されるのは当然だが、残念なことは確かだった。
「お、始まるみたいだぜ!」
ランダムにGGOの景色を映していたスクリーンが、遂に一つの場所に固定される。恐らくはそこが決勝戦の場所のようだが、まだプレイヤーの姿は見えない……にもかかわらず、その場にはある種の気配が渦巻いていた。
そろそろ始まる気配に皆がスクリーンに注目する中、アスナは一人だけ思索に耽っていた。ここにいない親友のことを。
「急用、か……」
「ふぅ……」
そして当の銃と硝煙の世界では、ショウキが最後の準備をしていた。《死銃》の正体に当たりをつけることや、シノンからこの決勝戦のルールを教えてもらう、などを終えた後に別れ、一人で集中を高めているのだ。すっかり愛銃となったAA−12を眺めながら、少し思索に耽っていく。
BoB決勝戦はトーナメント形式だった予選とは違い、参加者30名によるバトルロワイヤル。山や谷、川など一つの島のような極端に広いステージ――キリトによるとあの浮遊城の第一層と同じ広さらしい――に30名が一斉に転移し、最後の一名になるまで撃ち合う。それ以外にルールはなく、シンプルなバトルロワイヤルだ……ただ、そのステージの広さからか、十五分に一度だけ、各プレイヤーの所在地は全て明らかになる《サテライト・スキャン》というシステムがあった。シノンのようなスナイパーの強みを、少しだけ減らすためでもあるだろうこのシステムは、《死銃》を探す俺とキリトには都合が良かった。
先程シノンと協力して割り出した《死銃》候補のプレイヤーを、俺とキリトで手分けしてスキャンを頼りに追う。なんとも不確実な方法だが、今からはこれぐらいしか出来やしない。……そして俺が担当する候補には、もちろんあの踊り子が含まれる。
「リーベ……」
「――呼んだ?」
――ふと呟いた瞬間に、彼女の声が俺の耳に響く。まるで気配を感じなかったその不意打ちに、衝撃を受けながら振り向くと、そこにはその声の通り――先の予選で俺を打ち破った、ピンク色の踊り子である彼女、リーベが立っていた。
「はぁいショウキくん、元気? この前の予選は残念だったね?」
「……何の用だ?」
こちらが最大限の警戒を取っているにもかかわらず、そんなことは関係ないかのように、リーベは何の緊張も警戒もなく近寄ってくる。まるで友人でもあるかのように、軽いステップを踏みながらこちらを上目遣いで見つめてくる。
「いやん。そんな警戒しなくてもいいのに。ちょっとショウキくんと話したかっただけだよ?」
「確かに、俺も聞きたいことはあった」
こちらの態度に不満げに頬を膨らませたかと思えば、俺の返答にやったぁ、と無邪気そうに万歳と手を挙げる
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