第八十五話
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妖精たちの世界、アルヴヘイム・オンライン――その新たな空中都市《イグドラシル・シティ》の一角に構えた、キリトとアスナの住居が今回の集合場所だった。カランカラン、とドアに備え付けられた鐘の音が響き、刀を持ったいわゆる侍装備のサラマンダーが現れた。
「うーっす、間に合ったか?」
「まだですよ、クラインさん」
「むしろ仕事大丈夫ですか?」
中央に設えられたソファーに腰掛けながら、シリカとリーファがクラインのことを歓迎する。この妖精の世界とは似ても似つかぬ異世界、ガンゲイル・オンラインの最強プレイヤー決定戦に、キリトとショウキが出場することとなったと聞き、みんなで見ようとここに集まっていた。
「優秀なオトナはさっさと仕事なんて終わらせてんだよ。マスター、酒くれー」
「……はいはい」
中央のソファーには目もくれず、バーのようなカウンターに腰かけるクラインに、奥で飲み物の準備をしていた家主――アスナは苦笑いしながらも、追加で棚から酒類を取り出す。もちろん未成年であるキリトやアスナが用意したものではなく、当のクラインが倉庫代わりにしているものであるが。
「はいどうぞ、クラインさん!」
アスナがリーファとシリカにジュースを持っていく間に、妖精ではなく子供の姿に戻ったユイがクラインのコップに酒を注いでいく。身長が足りない為にクラインの横の椅子に立ちながら、ビール瓶の体重に少し負けそうになるユイの姿に、クラインはそれを手助けしながら満足そうに笑みを浮かべる。
「お、ユイちゃんに給仕して貰えるともっと美味くなるねぇ。どうだ、ユイちゃんも一杯……」
「――クライン?」
「じょ、冗談だよ、冗談!」
アスナからの冷ややかな視線に肝を冷やしながら、クラインは注がれた酒を一気に飲み干し、巨大な窓ガラスへと目を向ける。普段ならばこの都市を一望出来るそのガラスは、今は異世界を映画のように映すスクリーンとなっていた。ガンゲイル・オンライン――GGOの景色を映しており、決勝戦をここで見ることが出来る。
「はー……凄いもんだな、こりゃ」
「ですよね! この前、この大きなスクリーンでキリトさんと映画見たんですよ!」
キリトとアスナの仮住まいであるにもかかわらず、何故かシリカがクラインの感嘆に胸を張る。普段ならばここで、何であんたが威張るのよ――などと彼女からツッコミが入るところだが。
「……リズさんは残念でしたね。せっかくショウキくん出るのに、急用があって見れないなんて」
本来ならば一緒にソファーに座っている筈の鍛冶屋、リズベットがいないことにリーファが肩をすくめる。朝に声をかけた時は大丈夫と言っていたにもかかわらず、先程メールで急用が入った、と連絡が来ていた。特にこちらは急ぎの
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