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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第196話 其々の告白
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震えているシノンは、ただ リュウキの戦闘服の裾を握り締めていた。表情は、判らない。彼女はずっと、俯かせているから。
「……シノン」
リュウキ自身は、何も言えなかった。彼女の葛藤は、よく判る。……深い闇を抱えている事が判る。
――あの、シノンが倒れていた時。シノンと死銃の間に立つ刹那の時間。
其々の体感時間が圧縮された極限の時の隙間、リュウキは確かに見た。倒されても尚、あの全身麻痺のスタン弾を受けても尚、まだ 闘志を失わず、全神経を片手に集中させ、腰の武器を抜こうとしていた。ただ、倒されているだけの彼女じゃなかった。相手が死銃だと言う事も判っても尚、萎える事など有り得ない歴戦の兵士の闘志だった。
だが、その闘志が、心の中に灯った確かな光が、瞬時に奪われたのも見えた。
あの男が死銃を見せたその瞬間だ。闇は、広がり……一切の光の存在も赦さない。ゆっくりと、侵食していくかの様に、シノンの身体を蝕み、闘志を集中させていた手にも闇が届き、その手の中に届いていた銃を奪った。
シノンの瞳の先に映るのは絶望、だった。
「わ、わたし……」
シノンは、身体を震わせたまま、視線を下に、表情を俯かせたまま、つぶやくように言った。
「わたしは、にげ、にげない……」
「………」
はっきりと、シノンは意志を示した。身体の芯から震えていると言うのに、闇と相対していると言うのに、逃げると言う選択を拒否した。……己の奥底へと押し込めた。
「にげない。……ここに隠れない。わたしも、わたしも 外にでて、あいつらと戦う」
その意志の力は……心底感服する。あの男のしている事が判らない状態。死銃の力の意味を判った上でだ。だが、それでも、それだけは首を縦に触れなかった。
「……駄目だ。あいつらとはオレ達で戦う。シノンがこの世界に賭けている強い想いも知っているつもりだ。だけど、あれはオレ達の闇、なんだ。……頼む、手を引いてくれ」
これは、リュウキは言葉を濁している。本当の事を言わずに、シノンに引いてもらう為にだ。戦うべきなのは自分達であることを強調して、手を引いてもらう。シノンの尊厳を傷付け無いようにする為に。
だが。
「……かくさないで」
シノンは、それを見抜いているかの様に、声を上げた。先ほどよりも大きな声で。
「私は、アイツの標的……なんでしょ? なら、わたしにも戦う理由がある。……わたしは逃げたくない」
混乱している最中に、リュウキはキリトに確かに言った。
『危ないのは、オレでもキリトでもない。 ……シノンだ』と。
あの時の言葉は、朧げだが 覚えている。今はっきりと思い出す事が出来た。だからこそ、逃げたくなかった。逃げたこの先に待って
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