序章2 ユン・ガソルの王
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するのは承知させてもらいます。ですが、元々私が居た軍と戦いたくはありません。それ故、私の主である、ノイアス殿との戦には出さないで貰えないでしょうか?」
目の前の男を主と定めたとはいえ、その点だけは明確に決めておきたかった。自分は裏切り者となるが、以前の主と戦うのだけは躊躇いが生まれたのである。幸い、自身はメルキア帝国に仕えていたのでは無く、ノイアス元帥に仕えていたのだ。つまりノイアス元帥の私兵である。自分はメルキア軍として戦いながら、正式なメルキア軍属ではないのである。だからこそ、メルキアと戦うのは構わないが、ノイアス元帥とはたたかいたくなかった。裏切者が何を言うかと罵られても仕方がない事だが、私も人の子である以上は、譲れない線があったのだ。
「あー、それなんだがな」
「はっ」
ここにきて初めて歯切れが悪そうにする王を促す。その様子になんとなく、予想はついた。自分たちは、敗北を喫した直後なのである。
「敵元帥ノイアスはセンタクス敗残兵の中にいるという情報が来て居ないんだが、奴に致命傷を負わせたと言う報告は来ているんだ。つまり……」
「十中八九討たれた、と?」
「そう言う事だ」
「そうですか」
容易に予想できることだった。そもそも、本陣を死守しようとした自分が、それほど間を置かず破られたのだ、そういう結果はある程度予想できていたのだ。とはいえ、主だった人物が死んだというのにここまで何の感慨もわかないとは思わなかった。寧ろ、兵たちの事を考えてしまう。自分は彼らを死なせた者たちと組みするのである。それは酷い裏切りだろう。そんな自分を冷静に分析すると、嫌悪感が込み上げてきた。それを表情に出すことなく、心の中で自身に誓った。
――もし、次があると言うのならば、この身が果てようと、この男を裏切らない。
それが、私にできる唯一の事だった。一度だけ過ちを犯した。次は、ない。軽く目を閉じ、そう心に刻みつける。その思いだけは、何があろうと曲げない。そんな意志を灯し、目を開いた。
「吹っ切れたのか?」
「まさか。ただ、一つだけ決めたことがあります」
「そうか。なら、大丈夫だな」
「はい」
必要以上に問われることはなかった。そんな心遣いが、有りがたかった。例え聞かれたとしても、こたえる気はないのだ。先ほどの誓いは、自身の内にさえ秘めておけばいいのである。何より降った者が何を言ったところで、説得力などないし、態々誰かを前に口にすることとも思えなかった。
「じゃあ、ゆっくり傷を癒すといい。回復したら、詳しい事を伝える」
「はい」
王は満足そうに笑みを浮かべた後背を向け、そう告げた。それに短く答えると、軽く手を挙げ退出していった。
「っと、そうだった。最後に聞いておくことがある。お前、名
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