序章2 ユン・ガソルの王
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自然と笑みが浮かんだ。先ほどから良いようにしてやられていたが、どうやら一矢報いれたようだった。
「……くく、だぁーはっはっは!! そりゃそうだ。その怪我じゃ手なんか取れる訳ないな!」
「そう言う事です」
心底愉快だと言わんばかりにそういったギュランドロスに短く答えた。返答の意図に気付いたようである。
「くく、面白い奴だよお前は。だが、その場で斬られるとは考えなかったのか?」
「私は一度死んでいますからね。この場で斬り伏せられたとしても、あまり変わらないと思います。そして、なんとなく確信もありました」
口元に笑みを浮かべるギュランドロスに言葉を続ける。この人物の人となりは、事前にある程度調べていたのである。豪放磊落にして、大胆不敵。自分をどこまでも信じており、思い付きの意見を押し通し、配下の者を困惑させることも多々ある愉快犯。通称バカ王。そんな噂が届いており、細部の差はあれど、大まかにはそのような人物だった。
「ほう……どういうことだ?」
「好きでしょう? ああ言うの」
「くく、ふははは。いやいや、まったくだ。大した奴だよお前は」
自身は既に死んだ身であった。だが、生きていた。ならば、その数奇な運命を受け入れ、新たな主に仕えるのも悪くは無いかもしれない。そう感じた。
無論、誰が相手でも良いと言う訳ではなかった。配下になれと言って笑ったギュランドロスの器に、どこか惹かれたのである。こう言ってはアレだが、この男こそ主として戴くに値する人物だと、そう直感してしまったのだ。だからこそ、尋ねた。
「王よ私に才を見たと言いましたが、それは今でも変わりませんか?」
この男に忠誠を尽くそう。そう決めた。だからこそ、改めて聞いておきたかった。
「ああ、お前たちの軍が俺たちの本陣を襲った時、刃を重ねた。その時に感じたのさ。此奴は、俺とは別の才を秘めているってな」
「成程。つまり直感と言う訳ですか?」
聞き返す。正直に言うと、この男の言葉でなければ信じられないだろう。常人に理解できる明確な理由など、ないのだから。
「ああ。俺の直感がそう確信した。それだけで充分だろう?」
「……くく、あはははは。これは、勝てないわけだ。器どころか、規格が違う……ッ、くくく……」
自身を信じて疑わない、目の前の男に呆れをゆうに通り越して、親しみを感じた。盛大な馬鹿だったのである。自身を信じて疑わない、大馬鹿者。だからこそ、仕えるに値する。そう、思った。王と言うのは、常人の尺では測れないのである。そういう意味では、ギュランドロスはどうしようもなく『王』であったのだ。この男を支える。それは、どうしようもなく魅力的な事に思えた。
「ひとつお願いしてもよろしいか?」
「おう、言ってみな」
「貴方を主と
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