序章2 ユン・ガソルの王
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賦の才がな。そして、その一人がおまえだったと言う訳だ」
そう言って語るギュランドロスの目は子供のように輝いていた。我が主君であるノイアス元帥に戦を仕掛けたのも、宿敵であるメルキア帝国を討ち滅ぼすためだろう。だからこそ、人材は幾らあっても足りないと言う事なのだろう。言葉の端々から、ギュランドロスが自身を求めていると言う事は実感できた。
「私には、そのような才があるとは思えません。他者よりも少し戦う事が得意なだけです」
だが、自分にそこまでの才があるとは思えなかった。確かに、自分ではできると言う自信を持っていたが、つい先ほど敗れたのである。警戒していたにも関わらず、完全な敗北だった。だからこそ、目の前の男が言うような才があるとは思えないのだ。
「いや、ある。お前には、確かに才気を感じる。特に軍事に関する才をな。実際ぶつかった時、その統率された動きに見惚れた。あの時、エルミナが割って入らなければこの首を取られていたかもしれん。もしくは、騎馬隊同士で正面から直接ぶつかっていたら、数を見て少数と侮り驕りを突かれ討たれたかもしれん。素直にそう思う。それ位お前に脅威を感じたし、だからこそ欲しいとも思った」
「……」
俺の言葉にギュランドロスは、静かに答えた。自身が指揮した騎馬隊を見事だった、と。脅威に感じた、と。だからこそ欲しいとも。
その言葉はギュランドロスの表情を見る限り演技とは思えず、相手が本心からでた言葉のようであった。だからこそ、胸を打たれた。自身が完膚なきまでに打ち破った相手でありながら、恐ろしいと言い、欲しいとも言ったのだ。将として、これほど光栄なことはあるまい。
「それでも、私はその手を取れません」
数舜考え込み、静かに告げた。答えはもう決まっていたのだ。
「ほう? ならばこの場で死ぬしかないと解っているのか? 俺はお前が確かに欲しいが、降らないと言うのならば、その才を用い再び敵として現れる前に手を打たねばならん」
ギュランドロスは少しだけ意外そうにしながらも、言葉を続ける。どうやら、俺が自分の手を取ると想定していたからだろう。
「はい。例えそうだとしても、私にその手は取れないのです」
念を押すように言うギュランドロスに、穏やかに告げる。無理なものは無理なのだ。だが、自身を心底欲しいと思っていてくれる事が伝わってきて、嬉しく思えた。
「……それは何故だ? と聞いても良いか?」
残念そうにしつつ、理由を尋ねてくる。だからこそ、正直に答えた。
「そもそも手が動かせませんので、取りたくても取りようがないのですよ」
「……は?」
俺の返答にギュランドロスは、雷に打たれたように固まった。どこか呆けたような顔をしていて、こちらの思惑通りに事が進んだために、
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