序章2 ユン・ガソルの王
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ュランドロスに自身には無いモノを見て、そんな事を思う。尤も、今となっては詮無きことだろうが。
「いや、まったくだ。確かにそうだが、そう簡単に割り切れる者でもない、か。成程、これは思った通り拾い物をしたかもしれんな」
「どういう事でしょうか?」
俺の返答に、ギュランドロスはにやりと笑みを深める。新しい玩具を見つけた少年。そんな王らしからぬ顔に、どこか惹かれた。主君である、ノイアス元帥には感じる事が無い類のモノであった。
「お前の才が欲しい。俺に付いて来ないか?」
そう言って、にやりと笑いながら、ギュランドロスはこちらに手を差し出した。
「……」
言葉が出なかった。相手の意図が読めなかったのだ。
我が方の軍は一度ユン・ガソルを打ち破った。それは事実である。献策をし、自身が成した事が大きいという自負もあった。だが、それは戦いが終わった直後のギュランドロスが知るところではないのだ。幾らなんでも、情報が速すぎるのである。
確かに、自分は騎馬隊を指揮し、ギュランドロスを討つと言うところまで迫ることはできた。だが、それも一瞬でしかない。自分の場合は事前に顔を知っていたし、敵軍の総大将でもあるため覚えているのは当たり前なのだが、ギュランドロスからすれば俺の事など突如現れた刺客に過ぎないのである。戦場に在ればその程度の事は日常茶飯事にあるだろうから、顔を覚えられているとも思えなかった。
尤も、あくまでそれは将校のみが知る情報が漏れていないという前提の話であるが。
「それは、ユン・ガソルの王としての意思なのですか?」
それだけ尋ねた。自分が唯の将として捕えられたのならば勧誘もないとは言い切れないが、まったくと言って良い程名を知られていない自分を、死にかけのところから態々治療してまで命を繋いだのである。ユン・ガソルにとって、自分がそれだけの価値を持つとはとても思えなかった。それ故問う。
「いや、ユン・ガソルの王としてと言うよりは、ギュランドロス・ヴァスガン個人の意思だな。お前が率いる騎馬隊が向かって来た時、不覚にも敵の動きに見惚れた。此奴の軍略の才が欲しいと思った」
「成程。やはり、個人的な理由でしたか」
ギュランドロスの言葉を聞き、ある程度は納得できた。国としての意見では無く、個人の我儘を押し通したと言うのであれば、この無駄も理解できた。一瞬の交錯でしかなかったが、それでも王の眼鏡に適ったと言うのならば、それは光栄な事である。例えそれが、敵国の王だったとしても。そう、思った。
「ああ、俺の夢には、才のある者がたくさん必要だ。俺自身天賦の才を持っていると自負しているし、三銃士と言う自慢の矛と盾もある。だが、それだけではとても足りん。だからこそ、才が欲しい。誰の目にも光って見えるような、天
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