九十一話 エントリー
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トの間に、アイリが割って入った。
「けーんかしないの!でも……シノンとキリトが上がってくるなら、皆で本戦だね!」
さも当然そうにいったアイリに周囲から一斉に睨みつけるような視線が飛んだが、彼女は気にした様子も無い。気づいていないだけか、あるいは取るに足らぬと言う意思の表れか……
「ま、そうなるか。そん時は、ま、良い勝負を期待するぜ御二人さん」
「……あぁ!」
「本戦じゃ気付いた時にはもう終ってるわよ。私が相手ならね」
「そりゃこえぇ」
ニヤリと笑うリョウを、警戒するようにシノンが睨みつけた。
そうして、40秒あったカウントがゼロになり、四人は光に包まれた。
────
少年は思う。
今日出会った少女の発した、濃密な殺気の意味と、その奥に垣間見えた人恋しさのような気配の、どちらが本当な彼女であるのかと。
一つの、顔も、名も知らぬある人物の気配を感じ取るために。
《死銃》へと辿りつくために。
────
少女は思う。
今日出会った一人の青年の事を。愉快で、型破りな、一風変わった男の事を。
良い友人に慣れればと思う。しかし彼の中に、自分の知る、靄のかかった別の青年の姿が見える。
否。たとえ彼があの姿の向こうにあったとしても、自分のすべきことは変わらぬと、彼女は自らの気合いを入れ直す。
友として、楽しき時を刻めることを、彼女は心から望んでいるから。
────
少女は思う。
今日出会った二人の男と、自分の友人を豪語する一人の少女の事を。
自らの上に立つ強者たちを、全てなぎ倒す。自らの記憶を、過去に埋めるために。
彼女の目的は、揺らいではいない。
そして彼ら三人の全てが、強者であることを、彼女は直感で理解している。
──ならば、撃滅するのみ──
三人の……そして自分に凄まじい悪寒と、恐怖を感じさせた男の顔を思い浮かべながら、彼女は瞳の奥に藍色の光を宿らせる。
────
青年は思う。
今日出会った二人の少女と、弟の事を。
これから、彼らや、幾多の敵の中に飛び込み、弾丸を交える。
そう思うだけで、自らの中の、普段とは違うスイッチが点滅を始める。
かつて、いくつもの者たちを葬った自らの力が、この猛者どもの前でどれだけ通用するか……高揚が高まる。
「久々だ……」
────
硝煙と、鉄の匂いの充満する世界。
存在するルールは、唯一つ。“殺るか殺られるか”のシンプルな世界。
その中で、四人の少年少女はそれぞれの武器を、各々の場所に構える。
小銃が、拳銃が、狙撃銃が、光剣が、鉄と機械の唸りを上げて、彼等の手と腰に収まった。
誰かが言った。
「イッツ・ショウ・タイム」
BoB(バレッド・オブ・バレッツ)
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