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SAO─戦士達の物語
九十一話 エントリー
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ラーの防弾ジャケットを着て、快活そうな顔をした年上の女性……否、アイリの言うとおりならばこの人物は……

シノノンの視線に気づいたのか、赤毛のその人物が此方を向く。

「あぁ、言っといた方が良いな……俺は男だ。どうにも家の身内が迷惑かけたみてえで、すまねえな……まぁ、よろしく頼むぜ。シノノンさん」
ニヤリと笑ってそう言った。
どういう訳か、その笑い方に見覚えがあるような気がした。

一瞬そちらの感覚に気をとられたが、気のせいだと思い直し、彼女は少し不機嫌そうな顔で返す。

「今から大会なんだしよろしくするつもりも無いけど。一応名乗っておく。“シノン”よ。シノノンじゃないわ」
「ありゃ、そうなのか?」
「白々しい……」
今気付いた。と言わんばかりに首を傾げた男を、シノノン改めシノンは猫科の動物を思わせるその藍色の瞳で鋭く睨みつける。
ホールドアップするかのように両手を上げてプラプラと手のひらを振りながら、ニヤリと笑って男は言った。

「っはは。悪ぃ悪ぃ、そう睨むなって。俺はリョウコウだ。リョウとでも呼んでくれや、改めて宜しく頼むぜ“シノン”」
「っ……」
一瞬だけ、彼女は息を詰まらせた。ずけずけと名前を呼ばれたことに不快感を被ったから……ではない。
そのアバターの名前に、聞き覚えがあったからだ。

「……」
しかし、即座にその思考を振り切る。今目の前に居る男はこれからの大会で敵になるかもしれぬ相手だ。
仮に本人であったとしても、そんな思考は戦いの邪魔になる。
再び一つ息を吐くと、シノンは先程と同じくそっけなく答えた。

「……よろしくする気は無いって言ったでしょ。私の名前は……自分を殺すかも知れない相手だと思って覚えておく事ね」
「へぇ……殺す、ね……」
一見子供っぽく聞こえる、余りにも直線的で単純なその言葉。
しかして、彼女が決して冗談や格好つけでそれを言って居るわけではないことは、彼女がそう言った瞬間発された濃密な殺気から十分に理解出来た。
このフロアに来てから少しずつ感じていた感覚。久々のPvPに対する高揚感と、自分の中にあるスイッチの切り替わり。
彼女の言葉が、益々自分の中のそれを加速させてくれる。

まったく……そんな風に挑発されてしまっては、例え自分が戦闘狂のように熱くなりやすいたちでなくても、やはりワクワクしてしまうではないか……

「そいつぁ楽しみだ」
気がつけば彼は、普段の彼と比べても余りにも恐ろしげな笑みを浮かべていて、正面から向き合ったシノンが背筋が凍り付くような悪寒に襲われたことにも、隣にいたアイリの顔が強張ったのにも、キリトが苦笑しながらも冷や汗を流した事にも気付かなかった。

――――

「……ネ
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