九十一話 エントリー
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ぎる。
雑踏の音や、話し声、天井に表示されているBoBのデモ映像等の音がうるさく耳に入ってくるだけで、とても気配を殺していそうな音を聞き分けられない……
『しょうがねぇ……』
「リョウ!終わった!?」
「ん!?あ、あぁ。おう」
結局、リョウは一つも事項を入力することなく、SUBMITのボタンを押した。すると、エントリー受付完了の旨と、予選一回戦の時間が表示される。
日付は今日、一時間後。ブロックは……
「リョウはブロックどこだった?私は、Cの22番!」
「ん?あー、おっ、別ブロックだなEの17だとさ」
言うと、アイリは嬉しそうにその顔にぱっと笑顔を咲かせる。
「よかった!なら一緒に本戦に上がれるね!」
さも当たり前のように言う彼女に、リョウは思わず苦笑する。
「おいおい、まだ予選始まってもねぇんだぜ?」
そう言うと、アイリは悪戯っぽく微笑み、首をかしげる。
「あれ?負ける気なの?」
「あぁ?冗談か?」
ニヤリと笑って返してやると、アイリもまた、楽しそうにコロコロと笑った。
しかし笑いながら、リョウはのどの奥に魚の小骨が引っ掛かった時のような、ほんの少しの息苦しさと、ピリピリとした痛みを感じている。
『こいつの情報も……もしかすっと……』
重い違いである事を祈るばかりだが……しかし……
『めんどくせぇ……』
なんとも言えない不快感がうなじを刺激し続けリョウは内心舌打ちする。
エレベーターに乗ると、即座にアイリがボタンを押す。ゴウン……と低い音を立てて下降し始める鉄の箱に乗りながら、リョウは内心思った。
『せめて見られたのがアバターだけなら良いがな……』
確信はない……否、もっと言うなら、自分の自意識過剰ならばむしろその方が良いくらいだ。だが……
『なーんかおっかねえのに狙われるみてえな……あー、ヤダヤダ』
辟易とした気分の彼を乗せながら、エレベーターは下へ下へと下り続ける。目指すは……地下二十階。
――――
ポーンと言う音と同時に、扉がガラッと音を立てて開く。
その向こうに広がる暗闇から、ピリピリとしたPvP《対人戦》特有の空気が薄く漂ってきて、リョウはそれまでの不快感を忘れて思わずニヤリと笑った。
広さは一階のホールとそうは変わらない半球型のドームだ。しかしあちらと比べるとかなり暗く、照明は精々そこら辺にある金網に覆われたアーク灯が適当な光を薄暗いオレンジ色の光を放っている程度だ。
壁際には無骨な鋼鉄の机が並び、それらに囲まれるように中央には巨大な多面型ホロパネルが天頂に設置されている。
低いメタル型のBGMが良い感じに重々しい雰囲気を増長させ……
「リョウ、緊張してる?」
突然、隣からこの空間には水と油位にミスマッ
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