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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第194話 ただ1つの選択
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も、この状況でなんでそんなにも冷静でいられるの?
刹那、温りのおかげで……自分の心がわずかながら戻ったシノンは、その胸中でそう問いかけていた。
だが、直ぐに自分の言葉を否定した。
――冷静とか、そういうことじゃない。2人とも、ただ、ただ全力なだけなんだ。言い訳せず、全力を尽くして戦うことを選び続けているんだ。……そう、それこそが、2人の、この2人の強さ、なんだ。
シノンは昨日の予選決勝の舞台で、リュウキに訪ねた。
『それほどの強さがあって、あなたは何故……?』 と。……いや、シノンは、今ならよく判る。キリト自身も、リュウキと同じ理由で、あの会場で心を揺さぶられていたんだ。リュウキとキリトは、どうしてそんなに怯えるのか? と聴いていたんだ。
しかし、その問いかけは大いなる誤りだった。怯え、悩み、苦しみ……それでも前を向いている事が、本当の《強さ》。そこにはただ1つ選択があるだけだ。
即ち……立つか、立たないか、撃つか、撃たないかの選択があるだけだ。
そして、その選択が出来る最大の訳が……。
バギーに乗っている上でも、互いにアイコンタクトを送り合い、頷きあっているリュウキとキリト。
『……オレは1人じゃないから、1人じゃなかったから』
互いに、本当に信頼出来る、背中を預けられる、命を預けられる仲間がいるからこそ、その選択をする事が出来るんだ。
ずっと、自分以外の他人は全て敵だと、定めていた自分に、2人の様に出来るとは到底思えない。
――でも、せめて――今は、今だけは。
シノンは愛中のトリガーを掛けた指を全身全霊を振り絞った。軽めに調整してあるはずの、トリガースプリングが途方も無く重く感じる。だけど。
――今の私は……、1人じゃない。
傍らには、キリトが、……そして 横では、リュウキが。共にいてくれる。戦ってくれている。シノンは、この時……強く思う事が出来た。……仲間がいる事の強さを。
想いは形となり……自身の人差し指に宿った。
そして、
一発の銃声
(
へカートの咆哮
)
が都市廃墟のメインストリートに響いたのだった。
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