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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第194話 ただ1つの選択
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一瞬、区別をつける為に、そう考えていたキリトは 心にチクリと何かが刺さった気がした。口調、そして赤い眼、……刺される感覚。
だが、今はそれを深く考えている時間はない。
走り続けている内に、キリトは走る方角を突如変えた。
シノンは一体何を目指して走っているのか、判らなかった。だけど、その疑問は直ぐに解消された。
行く手の道端に出現した半ば壊れたネオンサインを見たからだ。夕闇の中に力なく点滅する文字列にはこう書かれている。
【Rent-a-Buggy&Horse】と。
グロッケンにもあった無人営業レンタル乗り物屋と同種だ。
看板通り、バギーカーと馬……馬に関しては生き物ではなく、ロボット・ホースだ。
数台のバギーと数匹のロボット・ホースが並ぶ乗り場に到着したキリトは、どちらを使用するか、一瞬だけ迷った様だ。
「馬は……、無理よ。踏破力が高いけど……扱いが、難しすぎる」
マニュアルシフト操作が必要な三輪バギーも乗りこなせる者は殆どおらず、シノン自身もそれをまるで手足の様に乗りこなしている人物は2人しか知らない。……が、それを踏まえてでも、乗りこなしている内の1人がいる事を踏まえたとしても、あのロボット・ホースの気難しさはバギーの比じゃないのだ。
機械仕掛けとは言え、まるで本物の生き物の様に高度のAIが組み込まれているのか、気まぐれを起こす事もある程だ。機嫌を損ねたら、振り落としかねない文字通りじゃじゃ馬もいる程だとか。故に、まともに操ろうモノなら、地道な練習。……若しくは現実世界で乗馬を嗜んでいる者が順応に早いだろう事くらいだ。
キリトは、なお逡巡する様子だったが、すぐに頷くと、1台のバギーに走り寄った。指導装置のパネルに触れて、エンジンを掛ける。シノンをリアステップに載せると、自分はシートに跨ったと同時に、躊躇わずアクセルを踏み抜いた。太い後輪が甲高く鳴き、バギーのマフラーからは白煙を上げる。
フロントが道路の北側を向いたところでキリトは一瞬だけ、バギーを停めて叫んだ。
「シノン、君のライフルであの馬を破壊出来るか!?」
「え……」
漸くしびれの薄れてきた右手で、左腕に刺さるスタン弾を苦労して抜きながら、まばたきした。背後のロボット・ホースを振り返るとやっと悟る。……キリトは、あのロボット・ホースであの男が――死銃が迫ってくる事を危惧しているのだ。だが、扱い憎さを知っている身とすれば、信じられなかった。
いつもなら、『有り得ない』と言うだろう。
だが、今は違う。……常識では有り得ない事が立て続けに起こっているから。人を本当に殺す仮想世界の銃、……過去から自分を追ってきた悪夢。もう、絶対は無い。
「わ、……わかった、やってみる」
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