暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第193話 温かい背中
[2/10]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
シノンは、見てしまったのだ。その
現実
(
・・
)
を。
死銃がマントから引き抜いた右手に持たれていた銃。
遠目からでは、ただの拳銃だろう、程度にしか判らなかったが、ここまで近くで見ればはっきりと判った。
それを見て、シノンは全身がまるで凍りついたかの様な感覚に見舞われた。
変哲のないハンドガンだ。今まで、この銃よりも強力な銃は見た事がある。
あの男が使っている《デザートイーグル》も其の1つだ。それも改造されていて、銃身が伸び、威力も初速も桁外れに上がっている《カスタムマグナム》。あれに比べたら、生易しいモノだ。そう言い聞かせていた。
だけど……出来なかった。
その威力は、シノンにとって、
桁
(
・
)
が違ったから。
死銃が左手をスライドに添えて、丁度銃の左側面がシノンの目に晒された。全金属性グリップと、その中央に存在する小さな刻印。
――中心に、星。……黒い星。
そう、かの銃は、未だシノンを……朝田誌乃を苦しめ続けている代物。
――
黒星
(
ヘイシン
)
、五四式。あの銃。
心臓を、……否、全身を鷲掴みにされているかの様に、全く動く事が出来ない。握られている感覚なのに、全身が氷の様に冷たい。……何時もの氷とは全く別ものだ。まるで、地獄から、……黄泉から死の冷気が身体に流れ込んできたかの様に。
――なん………で、なんで、いま、ここに、あの銃が。
力を失った右手から、最後の望みであるサブアーム、《グロッグ》が右手から滑り落ちる。だが、シノンは唯一の武器を手放した事すら、全く意識する事が出来なかった。
撃鉄
(
ハンマー
)
を、かちっ、と音を立てて引き起こし、左手はそのままグリップを包み、半身ウェーバー・スタンスでシノンを照準する。不意に、ぼろマントのフードの内部の暗闇が歪んだ。
……過去からの奔流が、現実へと流れ出てくる。
髑髏の様なマスクに覆われていて、表情が見えない筈なのに……眼もスコープの光しか見えない筈なのに。粘液の如く揺れ、どろり滴り、その内部から2つの眼が現れたのだ。
血走った白眼、小さな黒眼、散大した瞳孔のせいで、深い孔の様に見える。
――あの男。5年前の……。あの眼。
そう、自分の母親を、撃とうとしたあの男。……幼い自分が、無我夢中で銃に飛びかかり奪い、……そして殺した。
――いたんだ。ここに、この世界に。
全身が動かないシノンが、……誌乃がそう思ってしまうのも無理は無いだろう。この銃、そして明確な殺意。それらがかつての闇を起こしてしまったのだ。現実世界だけではなく、この世界にまで……。
――この世界に、潜み、隠れて、……私に復讐する時を待ってい
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ