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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 4.
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に贈られた物が衆目に晒される。それはミシェルにとって、歓迎したくなるアイディアではなかった。「それで構わないぜ」に近い寛容な言葉は出てくる気配がなく、かといって自分がクランの背を押した手前「ダメだ」と拒絶する訳にもゆかない。顔色を失った色男は高速のシミュレーションを繰り返しながら上手い答えを探し、情けない事にとうとう沈黙してしまった。
「おっと、どうした…?」煮え切らないミシェルの態度に閉口し、ロックオンが顔をしかめる。
 その空気に危機感を感じたのだろう。咄嗟の機転で決定打を放ったのは、女性寄りに立つ中原の言葉だった。
「あの…、こんなに綺麗なバラ。眺めてあげないとかわいそうです。今日からここに飾って、みんなが集まる度に見てあげる。というのはどうでしょう?」
 中原らしい優しい折衷案だ。そういう案が出てきたのなら、とクロウも助け船を出す。
「そうか。さしずめ、このバレンタイン企画のシンボルってところだな」
「はい」
 もしバラの扱いに不満があるのなら、贈り主は今度こそ自主的に姿を現すかもしれない。その時は、ミシェルとその女性2人の個人的な問題として謹んで外へと押し出す事ができる。動きが無ければ、何人かで毎日眺めてやるうちにやがては散って応援の役割を終えてくれる。
「私はそれでいいぞ」クランも、中原が出した良案に賛成票を投じた。花の贈り主を意識しているクランとしては、捜索を諦めずに済むというところが良いに違いない。
 これでミシェルさえ納得してくれれば、この恋愛沙汰に一応の区切りがつく。さぁ、うんと言え。言ってくれ、とクロウは祈りたくなる気持ちになった。
「まぁ…その辺りが妥協のしどころかもしれないな」未だ2人きりの逢瀬に未練のあるミシェルが、何とかこの案を了承した。「OK。それでいこう。やっぱり君はなかなか聡明だね、中原さん」
「はぁ!? ミシェル!! 琉菜に中原。今朝はどれだけの女を口説いたら気が済むのだ!!」
 激高するクランに、「バラを贈られたのは俺なんだぜ」とミシェルが声高に突っかかる。「本来なら俺個人の問題として、何一つ妥協する必要はない筈だろう? こんな騒ぎになった分、一応の譲歩はしたんだ。癒しの一つも欲しくなるさ」
「い…、癒し! 癒しだと!?」
 ミシェルの隣で反射的に立ち上がるクランを、「はーい、そこまで」とロックオンが制止する。もしここで仲裁が入らなければ、ミシェルは更に1歩踏み込んだ言葉を幼馴染みに投げつけ火に油を注いでしまったかもしれない。
 引き際をよくわきまえたミシェルが、余りやらない失態だった。発した少年もロックオンに割って入られた事で我に返り、曇った表情で口を押さえる。
 頃合いも良くちょうどドアが開いて、トレーを持った琉菜とエイジが戻って来た。空気の変化を察した琉菜が「どうしたの?」と問うの
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