月下に咲く薔薇 4.
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上での最低条件を満たす事ができるよう可能な限りの食事を支給し、多少の買い物はできるようにと決済可能なカードを渡されている。全てのメンバーは、割り当てられた額の中で服や備品を揃えたりできるのだが、中にはクロウのようにその割り当て分を後々現金で支給してもらおうと使わずに生活する者もいた。
勿論それはクロウが勝手に現金化の夢を抱いているにすぎず、実際に可能であるかは保証の限りでない。
琉菜とエイジが一旦会議室を出ると、谷川と中原が再び資料綴じを進め、次には2列ある2人がけの机に前から順に向きを整え置いて回った。
中原が、谷川が、ちらりちらりとクランの手元を見る。
切羽詰まった様子で会議室を出ようとしたクランの様子から、2人共あのバラに何か重大な意味があると察してはいるのだろう。手慣れた様子で最前列から資料を置きつつも、不意に顔の向きが変わるので関心事の中にバラが入っているのは傍観者からよくわかる。
とうとう、クロウは2人と目が合った。それはロックオンも同じで、1輪の花にどう触れたらよいものかを視線で尋ねてくる。押し殺した無音の中には、好奇心と困惑がほぼ半々の状態でぎっしりと詰め込まれていた。
クランの勢いを冒頭で削いだその様子から、ミシェルがバラの件には誰一人触れて欲しくないと考えている事は間違いない。その防壁を突破したいクランとは微妙な駆け引きの真っ最中で、窓側の最前列からは美花のオーラの他に静かな火花が垣間見えた。
バラの贈り主を探さんとするクランは今も諦めてはおらず、ミシェルは、彼女が再び立ち上がろうとすれば制止するつもりでいる。張りつめた緊張感は次第に会議室全体へと広がってゆき、その中心には、たった1本の切り花があった。
見かねたデュオが意味もなく会議室の中を歩き始め、谷川、中原の2人とすれ違いざまにぽそりと何がしかを囁いて聞かせる。直後、2人はやや驚き、そして改めてミシェルとクラン、そしてバラの3者を見比べた。
「お前達でもないのだな…」
事情を知った2人を候補から除外し、クランがさもつまらなそうに椅子の背に上体を預ける。
「まだ気にしているのか?」やむを得ないという思い半分、更には呆心半分で、ミシェルが遠回しに「もう忘れろよ」と釘を刺す。
「だって…」
「もしかしたらこのバラは、『これから始める事が上手くゆくように応援しています』くらいの意味しかないかもしれないじゃないか。花に込めるメッセージなんて、恋愛感情ばかりとは限らないだろう? 無言のメッセージを深読みし始めたら、いずれ全く別の可能性に着地するぞ」
「それなら…」椅子から腰を浮かせ、クランがバラをミシェルの眼前に突きつける。「みんなが使う場所にこれを飾るのはどうだ? 折角の美しい花なのだ。きっとカレンやゼロ達の心が和むぞ」
「ん…!」
自分個人
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