月下に咲く薔薇 4.
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見送りが済んでからロックオンがくるりと向き直り、「お嬢さん方、俺達に手伝える事はあるか?」と助力を申し出た。
谷川と眼鏡をした女性社員の中原は顔を見合わせ、谷川が「うーん、特にないかな」と人差し指を顎に当てながら天井を仰ぐ。「でも…、今のうちに自分の好きな飲み物とか持って来といたら?」
「じゃあ、私とエイジで取ってきてあげる」
不意に琉菜が志願し、しかもその言葉でエイジまでもをさっくりと巻き込んだ。話の流れから察するに、ここに居る者全員の分を用意するつもりでいる事は明らかだ。
「えーっ!? 何で俺まで!?」当然不服を唱え始める仲間に琉菜が無視を決め込んで、「ミシェルとクランは、ここにいて。2人共、何がいい?」と渦中の2人に問いかける。
「なーるほど。上手い手を思いついたな」
意図するところを察したデュオが、壁にもたれ掛かりながら腕組みをしにやりと笑った。もし、琉菜の提案通りに話が進むなら、クランはバラの贈り主を室外まで捜しに行く事ができず、ミシェルの監督下に置かれ続ける事になる。
「ありがとう。じゃあ、俺はコーヒーを。いつものようにブラックで」厚意に感謝し、ミシェルがさっそく琉菜に頼む。尤も、それだけで終わらないのがミハエル・ブランという男なのだが。「ここのコーヒーも悪くはないけど、琉菜、君の気配り程には俺を酔わせてはくれない。もし売り切れていたら、今の君が一番欲しいと思う物を俺にも頼むよ」
「あー、はいはい」歯が浮くような感謝の言葉に、かえって興ざめした琉菜が軽く流す。「じゃあ、納豆しるこ、にしておくわね。これからっていう大事な時に酔っ払いが出ても困るから」
「ありましたっけ、そんな飲み物…」
中原が首を傾げれば、「冗談よ」と速攻で返事が返ってくる。
「ふっふーん。バチが当たったな。ミシェル」
クランが横に長く白い歯列を見せ、さも勝ったと言わんばかりの得意げな顔をする。そして彼女も琉菜に礼を告げると、レモネードを頼んだ後、ミシェルと共に窓寄りの最前列に2人で並んで座った。
「ロックオン達はどうする?」エイジがクロウ達3人に希望を尋ねるので、ロックオンとデュオがコーヒー、クロウは水を頼んだ。
「砂糖水じゃなくて、水なんだな? それって、ただの水の事だよな」
砂糖の有無。その差の部分を強調し、エイジがしつこく確認を求める。
「ああ。日本の水は旨い。ウォーター・サーバーので十分だ」
満面の笑みで、クロウも肯定した。これで、クロウの割り当て分から飲み物の代金が引き落とされる心配はなくなった。どうしてそれを喜ばずにいられよう。
「あー、守銭奴が何かに浸ってる」
巧みに思考を読んだ谷川の揶揄も、今は心地よい。
ZEXIS所属のメンバーは、この多元世界に職を持つ者と持たない者が混在する為、全員が人として生きてゆく
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