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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第125話 名門の名門足る所以
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宮と天の中津宮との関係は御世辞にも良いとは言い難い関係なのですが、それは地祇系の家に繋がる家とはあまり関係のない話ですから。

「それで――」

 月下に立ち、ただ静かに俺を見つめる巫女服姿の少女を瞳に映しながらも、非常に現実的な思考に支配され続ける俺。その俺に対して、何かを問い掛けて来るハルヒ。
 イカン、これではまるで弓月さんの容姿に瞳を奪われていたように思われても仕方がないか。

「何がそれで、なのかなハルヒ?」

 少し心ここに非ず、と言う雰囲気を気付かれたくない為に、出来るだけ普段と同じ調子で答えようとして……返って妙にワザとらしい雰囲気を発して仕舞う俺。
 その俺の様子に気付いたのでしょう。ふふん、と鼻を鳴らした後に、

「さっき、魔術的な名家に能力者の子供が誕生し易い理由をあたしが答えた時に、あんた、あからさまにほっとしたでしょう?」

 あんた、隠し事をするには向いていないわよ。
 こう言う雰囲気を鼻高々と言うのでしょう。そう言う得意満面な表情で種明かしを行うハルヒ。但し、こいつ、俺が悪意を持って隠し事をした、と思って居るのでしょうが……。

 さて、どうやって誤魔化してやろうか。そう考えを始める俺。
 しかし――

「教えて上げた方が良いですよ、武神さん」

 涼宮さんは自分の意志で知りたいと思って居るのです。私の事なら気にしなくても良いですよ。
 悪意――は感じない。どちらかと言うと、やや自嘲にも似た言葉の響きを持ってそう続ける弓月さん。

 月明かりに照らされた弓月さんと、そして、未だつけっぱなしの懐中電灯の明かりを発し続けるハルヒ。陰と陽。ふたつの美貌を僅かな時間差を持って瞳に映す俺。

「――あまり聞いて楽しい話ではないぞ?」

 俺の洞の戒律に触れる可能性はある。これは本来、一般人が触れるべき情報ではない。確かに俺が仙術を学んだ洞統は智を貴ぶ洞統。しかし、その教えでは、一般人に対して見せるべきでない情報や知識を教える事は戒められている。
 ただ、ハルヒの場合は……。

「そりゃ、あんたがどうしても話したくない、と言うのなら無理に聞き出そうとは思わないわよ」

 俺の逡巡をどう言う意味に取ったのかは分からない。ただ、知的好奇心を満たすため、だけではない雰囲気でそう言葉を続けるハルヒ。
 その時、冬の夜に相応しい風がすっかり葉を落として仕舞った広葉樹の枝を揺らした。

 これが……問い掛けて来た相手が有希ならば何の逡巡もなく答えて居た。しかし、ハルヒの場合は……。
 コイツは自分と言う存在の危うさに未だ気付いていない。いや、自らが今年の七月七日の夜まで世界に取ってどう言う存在だったのか覚えてさえもいないでしょう。

 ただ、まったく知らないよりは、少しでも
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