第6章 流されて異界
第125話 名門の名門足る所以
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居る黄色の系統の着物を着こなした老女が――
「初めまして。私がこの宿の大女将高坂静と申します」
☆★☆★☆
昨夜の雪が嘘のように晴れ渡った氷空。完全に合一したふたりの女神が放つ蒼き光輝が支配する世界。
そう。すべての葉を落とし次なる季節の為へと準備を進める広葉樹の林には、今宵の宿と成った純日本風家屋から漏れ出る光すら届かず――
その世界の中心に……。
高く、低く。
清らに流れる水の如く……。
早く、鈍く。
柔らかくそよぐ風のように……。
時に軽く、時に重く。
己がすべてを音に乗せ、まるで語りかけるように奏でられる旋律。
時に瞑想的に、そしてまた、叙情的に。
たゆたうように流れ行く穏やかな音色。
俺の能力を余さず籠められて発せられる音の羅列。それは一音が儚く消えると同時に次の音へと繋がり、途切れる事なく続いて行く。
ゆっくり、ゆっくりと――
そして、それはやがて大きな螺旋を描き……。
しかし――
「あんた、楽器も出来たんだ」
俺の演奏――術式が終わるのを待って居た少女が声を掛けて来た。しかし、それは普段の傍若無人な彼女にしてはかなり控えめな言動。但し、手にした懐中電灯の光で直接俺の事を照らし出しているので……。
コイツ、月の光だけに慣れた瞳に、旅館備え付けの懐中電灯の明かりがどれだけ眩しいか考えた事はないのか?
尚、一応、ハルヒの瞳にも俺の周りに集まっている精霊の姿は淡い燐光の如き物……世間一般に言われているオーブ現象に似た状態に見えているはず。
その事について問わない、……と言う事は、別の用件があるのでしょう。
「怪奇、人気のない夜の森に響く笛の音。その音源を辿ると其処には! ……って言う噂話の元を作る事には成功したかな」
結局、目的を果たす事は出来ず、単にふたりの少女の前で笛の腕前を披露しただけ。これでは皮肉のひとつも出て来ると言う物。
しかし――
「あの、武神さん」
しかし、この場に居るもう一人の少女にはこのしょうもない皮肉は通じなかったらしい。かなり不安げに話し掛けて来る弓月さん。もしかすると、ここに居る彼女の存在自体が俺の術を失敗させた理由だと思っているのかも知れませんが……。
これでも土地神を召喚する術に関しては完全に自分の物にしている。それでも尚、今回術を行使して土地神を召喚出来なかったと言う事は――
「あぁ、問題ないで。弓月さんが一緒に居る程度で集中が途切れる事はない。今回の術は失敗した訳ではなく――」
旅館、更に言うと綺麗に舗装された道路からも離れた巨木の元。ここで土地神……弓月さんの親戚の御先祖様の霊や、最悪、自然の精。山の神のような存在さえ呼び出せないと言う
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