第6章 流されて異界
第125話 名門の名門足る所以
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成るので……。
それも安楽椅子系の探偵などではなく、タフでハードボイルドなタイプの探偵役。
ある程度の頭と、それ以上に必要な頑丈な身体が要求される役回りって、一度ぐらいなら良いけど、毎度毎度そのような役ばかりだと心の方が折れて仕舞いますよ、本当に。
幸せの妖精さんが俺の周りから逃げ出し続けるのは、厄介なタイプの事件が起こり続けるからなのでしょう。
肩をすくめ、ため息を吐くしかない状況にバスの天井を見上げた俺。その瞬間に、地方都市にありがちな妙に整備された道路を進み続けたバスがゆっくりと止まった。
民家が見えなくなってから約五分。それほど人里から離れたと言う感覚はないが、それでも浴衣を引っかけて街をぶらつく、……と言う訳には行かない距離にある旅館と言う事か。
……等とぼんやり考えて居ると、ゆっくりと開かれるバスのドア。このプシューと言う音の後にバスのドアが開いた時が、バスによる旅の終わりを感じる瞬間と言っても良いと思う。
「一日掛かりの移動、御苦労さまでした」
一行の中で最初に立ち上がった弓月さんが、振り返ってそう言った。
確かに朝の六時に西宮の駅に集まってから列車を乗り継ぎ、最後はマイクロバスに揺られること約一時間。移動用の術式を組む方が俺に取っては楽なので……。
「実際、お疲れさまやな」
少し高い目の昇降口から大地に降り立ち、軽く伸び。固まって居た関節部分が若者にはあり得ない音を発した。そしてその瞬間、暖かかった車内から、北国独特の冷えた大気を身体に循環させる事により気合いを入れ直す。
ここから先は戦場の可能性がある。確かに東北最大の駅仙台に辿り着いた瞬間から、それまで感じていた気配とは違う気配を感じた。そして、それはこの高坂の地に近付くに従って大きく成って行ったのも事実。
この地は元々蝦夷の地。多賀城などはその最前線。現在進行形でまつろわぬ者扱いの龍種たる俺には何か感じるものが有るのかも知れない。
「お待ちして居りました、皆さま」
氷空には満天の星と、完全に合一した二人の月の女神。背後に黒々と繁る広葉樹林。
夜の帳が降りて間がない時間帯とは言え、周囲に人工の明かりが存在して居ない故に、はっきりとした事は言えない。が、しかし、其処に立って居たのは純日本風の二階建てと思しき建物。かなり幅が広いように感じる。
その玄関先に立つ数人の女性。玄関からの明かりと氷空に輝く月の明かりだけの世界では圧倒的に光量が不足し過ぎて居て、その女性たちの容姿に関しても定かではないが……。
おそらく、真ん中の和服の女性。背は高くないが、低く落ち着いた声音。着物の種類は分かりませんが、一人だけ色の違う……周りの女性は藍色。この人たちはおそらく仲居さん。そして、真ん中に
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