第6章 流されて異界
第125話 名門の名門足る所以
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十二月十八日。
長い弓月桜の話が終わり、文芸部兼涼宮ハルヒが率いる意味不明の団体の部室内に一瞬の静寂が訪れる。
……俺の意志は決まっている。SOS団としてこの申し出を受けるのは当然不可。不確定要素が大き過ぎて、彼女の話した内容を完全な与太話。――それは彼女の親戚の思い込みだ、これ以上気にしなくても大丈夫だよ、と安心させてやる事が出来る内容ではない。
故に――
「もし俺たちが、この申し出を断ったとしたら、弓月さんはどうする心算なんですか?」
ちょっと、あんた、何を勝手に答えているのよ! ……などと騒ぎながら、自ら専用のキャスター付き事務椅子を滑らせ俺たちの傍まで寄って来た団長様の事は無視。
コイツの答えなど聞かなくても分かっている。分からないのは弓月さんの覚悟。
俺の問いを聞き、彼女の雰囲気や普段の仕草に相応しい、控え目な花が咲いたような笑みを魅せる。優しい……けど、少し哀しげな笑みを。
そして、
「その時は私。弓月家次期当主の私一人で高坂の地に向かう事と成ります」
それが祖狐葛葉より始まりし弓月の家に生まれた者の務めですから。
覚悟を決めた者の言葉を続ける弓月さん。その時に彼女が発した雰囲気は普段の彼女が発して居る弱気な物などではなく、強い気。タバサや有希が発して居る気配に似た物であった。
そうして……。
小さく首肯く俺。この表情と答えを聞かされて、断ると言う選択肢が少なくとも俺の中では消えた事は間違いない。
ただ、……成るほどね。弓月桜の口にした内容、祖弧葛葉と言う名前が本当ならば、彼女の家もかなりの大物をその祖とする一族と言う事となる。
相馬さつきが平将門なら、弓月桜は安倍晴明と言う事か。
まぁ、この両家からすると、大抵の家は新興の家と言う事と成りますか。
そして十二月二十日。
路肩には昨日降った雪と泥が混じり合った茶色の塊が未だ存在していた。こんな些細なトコロからも、ここが俺の生まれ育った南国と呼ばれる四国地方や、有希が暮らしていた西宮と違う東北地方だと言う事が感じられる。
ただ……何と言うか、街全体の雰囲気がよそよそしく、まるでこの高坂と言う街自体が俺の事を拒んでいるかのような、そんな気さえして来る。そのような街でもあった。
もっとも、ここは東北と言っても太平洋岸に存在する地方。故に降雪量自体が多くなく、西日本在住の人間が考える真冬の東北地方と言う方向から考えると、かなり寂しい景色だと言わざるを得ないのですが。
確かに刈り入れの終わった田んぼや畑にはうっすらと積もった雪が多少、北国らしさを演出しているように感じますが、この程度の降雪ならば西日本でも見られないモノではない。俺が見たかったのは、こう道の両側に迫
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