暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第186話 届かない言葉
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 それがあるから……、彼女は自分自身の気持ちを曇らせる枷になっていることに、まだ気づいていなかった。




「…………」

 男は彼女の去る方をじっと見つめていた。彼の中に、彼の瞳の中に映る彼女。どうしても、自分の手の、腕の中に。……自分のものになって欲しい。そんな切望がにじみ出ているかの様だった。狂おしい程愛している。とも言えるだろう。だが、それは何処か歪んでいる様にも見える。男はこの場を後にしようと歩きだした。

 ……やらなければならないことがあるから。

「……振り向かず、そのままの 姿勢で聞きなさい」
「っ!」

 そんな時だ。
 路地裏から、だろうか? 突然背後に何かの気配を感じた。そして、それと同時に声も聞こえてきた。

「……貴方は、彼女のことを想っている様に、拝見しました。……貴方が今やろうとしている事は、それは本当に彼女が喜ぶ事、なのですか?」
「………」

 振り向かず、ただ沈黙をしている。男のそこには、もう1つの顔が浮き上がっていた。

「本当に、彼女(・・)を想うのなら、……もう、止めなさい」
 
 慈愛とも言える優しい声……なのだが、彼には一切聞こえなかった。

「なんの事か、判らない」

 ゆっくりと振り返ると、そこにはフードとマントで身体を覆ったプレイヤーがいた。

「……誰?」
「もう一度だけ言いましょう。……止めておきなさい。大切なモノを失う前に」
「僕には、さっきから一体何を言ってるのか判らないよ」
「そう、ですか」
「変な言いがかりはやめてほしいな。……何だか、気分悪いや」

 そう言うと、指を振る。ウインドウを呼び出し、ここからログアウトをする為だろう。

「最後に……もう一言、良いですか?」

 そう言うと、彼の指がぴたっと止まった。


『……ただの犯罪者』


「っ!」

 この時、彼の表情が明らかに変わり、ぴくりと身体を震わせた。動きを止めた指すらも、数cm動く程に。

 フードに包まれた男の声色も、優しいものだと思えていた印象がガラリと変わる。

『力を持ったと勘違いした。……クレイジーな犯罪者。……時の問題だ。何かを起こそうものなら、止めておけ。……齎されるのはお前自身になるだろうから』

 淀み無く言われ続ける罵倒の様な言葉。普通であれば、何も知らなければ、『コイツは一体何を言ってるんだ?』となるだろう。或いは、あのサイト、提示版を見たのであれば、『痛い奴』という感じで嘲笑するだろう。だが、目の前の彼はそのどちらでもなかった。

 最後の一言で、更に彼の表情が一変する。


『――……お前はただの犯罪者だ』


 そう言うと同時に、まるで視界から消える様にいなくなっていた。い
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