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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第185話 温もりの違い
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 不意に耳元で囁かれ、そしていつの間にか、背後の鉄柱ごと、恭二の両腕に包まれていた。まるで、恋人がそうする様に。……だけど、それを意識した瞬間、考えた途端、詩乃は反射的に両手で恭二の身体を押し返していた。

「………」

 恭二が傷ついた様な瞳で詩乃を見た。それも見て、ハッとした詩乃は慌てて言い訳をする。

「ご、ごめんね。そう言ってくれるのはすごく嬉しいし、君のことはこの街で……」

 そう言い切る時だった。頭の中に、チクリ、と何かが迸った。


『大丈夫か? ……その、悪かった。いきなり手なんか握って』


 声が、耳元で聞こえた……気がした。恭二の囁きよりもずっとずっと微かな声。


『どうもありがとう。ここからは《大丈夫》……だから。そっちも《大丈夫だよな?》』


 微かだけど、暖かな声。


――……なぜだろうか? その暖かさの種類が、同じ……なんだ。


「朝田、さん?」
「っ……」

 突然固まってしまった詩乃を見て恭二は思わず声をかけた。寂しそうに。ナイーブな彼の表情が更に落ちている。

「違う、違うの。……だって、新川君は私のこと、沢山助けてくれてるし。この街でも信じられる人、だと思ってる。 でも、でも。今はまだ……そういう気にはなれないんだ。……私の戦いが終わらないと。……それに、この問題は私が戦わないと、解決しない、から」
「……そう」

 頷いた恭二だったけれど、やはり寂しそうに俯くその姿を見たら、詩乃には罪悪感が胸に満ちてくる。恭二と、なぜか、なぜか比べてしまったけれど、本来はそんな事を考える時点で、最低だと詩乃は思えてしまった。何故なら、彼は、新川恭二と言う男は、自分の素性を、あの遠藤達が喧伝した為、全て知っているのだ。その上で、総てを知っても彼は自分から離れず、心を寄せてくれている。そして、彼が失望して離れようものなら、相応の哀しさ、寂しさで心を覆ってしまう事は判るだろう。


――そう、判っているのに……、ここの所、何故だか曇って見えてしまう。


 なぜか? 決まっている。……あの2人に出会ったから。


「だから……だから、待っててくれる?」


 詩乃は極かすかな声で囁くと、恭二も頷いた。


――……ありがとう、と唇だけで呟く詩乃。


 そして、これも無意識に、だろう。いや、この時詩乃は誰がいったのかすら自分自身でも判らなかった。なぜか、判らないけれど、その後に、『ごめんなさい』と 微かに聞こえたのだ。


 それが自分自身の声だと判ったのは、恭二と別れた直ぐ後のことだった。


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