彼女達の結末
二 衝動
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るように移動する重心と近付く足。その巨人を市街地で相手取るのは危険だと知るも、場所を移す猶予などなく。それに。
今の私は、何故か。酷い、飢えを感じていて。それは、体を突き動かし。向かい来る敵へ、今すぐにでも飛び掛りそう。
腹部に。手を掛ける。鉤爪の切っ先を当て、息を吐く。
「マト……何を、思い出したの。ねえ」
爪を腹部を滑らせるにつれ、液体が頬を伝っていく。押し寄せる衝動に身を任せ、心を抑え殺していく。
「……ごめん……リティ。ごめん。後で、後できっと、話すから」
本当は、分からない。話せるかなんて、分からない。会話を断ち切るためだけの言葉、本心を隠すための言葉。
彼女が大切であることは決して変わらず。共に在りたいことは変わらず。けれど。
けれど、今は。胸の中に満ちるもの。抱いてしまった思いを……抱いてしまった、私を――
――私を。見ないで、欲しかった。
◇◇◇◇◇◇
黒く蠢きのたうつそれは蛇に似た。無数の蟲、繋がれた体、開いた口は赤く。長い長い茎の先に鮮明な色の花弁だけを乗せたようなその姿は、彼女と行動を共にしてきた中、一度たりとも自ら進んで解き放とうとはしなかったそれ。狂気に犯され、心を嬲られ、我を忘れたそのときにだけ。心を結んだ……少なくとも。私はそう。きっと、彼女もそうだろう。そんな私の声すら届かない、その時にだけ、半ば無意識の内に解き放っていた異形の証。
彼女の嫌ったその姿を。言葉を交わすことが出来るだけの理性が残っている、今。彼女は自分の意思で、私へと見せて。彼女の目で、見て。
「マト」
歩みだす彼女に。呟き投げた言葉は、届き。私の呼びかけに、彼女は。小さく頭を振って応えた。
「……大丈夫。きっと……負けないから。リティも、気をつけて」
「でも……っ……」
このままで。良いはずがない。彼女を放っておいて、良いはずがない。でも。
言葉が。言葉が。見つからない。見つからなくて。
「……分かっ、た。マトも……マトも」
気をつけて、と。やっと、紡いだ、紡いだ言葉。掛けるべきそれとは異なる言葉さえも置き去りに。死肉の巨人へ、駆け出して。
「……ごめんね、マト。私がもっとしっかりしていれば、あなたに……こんな思いをさせなくて、済んだかもしれないのに」
銃を構える。狙いを定めて、引き金。乗せた指、震えそうになる指を諌めて。
息を吸う。必要の無い呼吸。気持ちを落ち着かせるためだけの行為。
今の戦い。この戦いに集中する。一刻も早く終わらせること。それだけを考えて。
巨体の胸へと銃弾を放つ。鳴り響いた轟音を皮切りに、巨人たちへと駆け出していたマトが跳躍する。私の
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