解かれる結び目 13
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
床に倒れたアルフが、見開いた目で私を見てる。
真横から私の脇腹に手を突き刺したレゾネクトが、少しだけ驚いた様子できょとんと瞬いた。
「……あ……」
妙に長く感じた数秒を経て、レゾネクトの腕が私の体から引き抜かれる。
自分から飛び込んだのに、貫かれたことへの衝撃のほうが勝っていて。
違和感はあっても、痛みはあまりない。
受け身をとることもできないまま、赤い絨毯の上で転がり、静止して。
貫かれたところから、血液が大量に流れ出ていくのを感じる。
「やはり、体の造りは人間と同じなのか」
何かに納得したらしいレゾネクトの声が聴こえる。
でも、うつ伏せになった私の視界は、ほとんど真っ黒で。
微かにぼやけて見えるのは、私の腕と、黒い法衣の裾と、赤い絨毯だけ。
視覚も聴覚も触覚も、血液と一緒に流れ出ていく。
「…………────!!」
遠くに、アルフの声が聴こえる。
答えなきゃいけない、のに……目蓋が重くなって、体が重くなって……。
どうしてだろう……寒い、な。
すごく……寒い。
アルフの腕の中は、陽だまりみたいに優しくて、温かかったのに……。
もう、戻れないんだね……
「…………?」
ほわ……と、お腹の辺りに温もりを感じる。
一点から全身へ、柔らかな熱がじんわりと広がっていく。
まるで、暗い檻の中から、穏やかな陽射しの下へ連れ出されたみたい。
「…………アル、フ……?」
軽くなった目蓋をゆっくり開いて……
固く目を閉じ、苦しそうに眉を寄せている綺麗な顔を、間近に見つけた。
「……アルフ?」
なに?
どうして、そんな顔……を?
「……マリア……、ごめん」
「…………?」
「俺は君を……護れない。でも……」
開いたアルフの目が、緩やかな曲線を描いた。
すっかり見慣れた、朗らかな微笑み。
「どうか…… 生きて……」
……眩しい太陽が……
私を照らす太陽が……
「アル……フ……?」
さら……と、灰になって。
純白の光と一緒に。
真っ黒な闇の中へ。
消えた。
「…………アルフ……?」
なんで。
どうして、アルフが。
「アルフ!?」
横向きの状態から跳ね起きた私の右手に、砂より柔らかな灰が触れる。
その感触が、全身に残る温もりを一瞬で凍り付かせた。
「……うそ……。嘘よ…… こんな……」
「これが、勇者の生きた理由?」
すぐ近くでレゾネクトの声がする。
だけど、そんなのどうでもいい。
アルフ……嘘だと言って、アルフリード。
ちょっとした冗談だって。
神々の祝福を授かっている自分が、そう簡単に
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ