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逆さの砂時計
解かれる結び目 13
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赦さない! レゾネクト!!」
「……!!」

 白い光が私の体から溢れる。
 剣を通してレゾネクトへ流れ込む。

「アルフの苦痛を思い知って消滅するがいい! 無知なる悪魔の王よ!!」

 一瞬の閃光。
 アルフが私に遺した、『退魔』の力。
 アルフほど強く使えはしないけど、体内に直接放てば避けようがない。

 コーネリアが、ウェルスが、アルフが死んだこの場所で。
 アルフの剣で。アルフの力で。
 貴方も消えてしまえ!
 レゾネクト!!

「……っ」

 弾けた光の中で、レゾネクトの驚きと苦しみの表情が見えた。
 言葉を発する間もなく気配が消えて、急に剣が重くなる。
 膝立ちの姿勢を保つ体の手前に。
 カラン、と乾いた音を立てて、剣が転がった。

「コーネリア……ウェルス……アルフ……」

 誰も、居ない。
 真っ黒な闇の中で、私は一人きり。

「…………アルフリードぉぉおお────っ!!」

 誰もいない。
 私の他には、誰もいない。
 太陽は消えてしまった。
 もう、私に光は射さない。

 信じた人達は、信じてくれた人達は、皆消えてしまった。
 固く結んだ絆は解かれて、二度と結び直せはしない。

 どれだけ闇に手を伸ばしても。
 優しく握り返してくれる温かい手は、もう……無い。

「何故、泣く?」

「………… !?」

 どうして。

「お前の泣き声は……何故か、あまり心地好く感じないな」
「な、んで!」

 今。
 たった今、『退魔』の力で、消した、筈……!

「勇者の記憶のせいか?」

 剣が転がっている筈の正面に浮かび上がる、一対の紫色の光。
 ある筈のないそれが、私の目をジッと覗き込んでる。
 伸びてきた両手が、また、私の頬を包んで。
 レゾネクトの唇が、私の唇に触れる。

「…………っ!?」

 それだけ。
 唇に触れられた、それだけで。
 全身から力が抜けて、レゾネクトの腕の中に倒れ込んでしまった。
 指先が動かせない。声も出せない。

「お前は、何かの答えをくれるだろうか」

 横抱きにされて、どこかへ連れて行かれる。
 驚きと、抵抗したくてもできない焦りが、心臓を異常に活発化させる。
 着いた先は……
 横たえられた肩から柔らかく沈み込む、シーツの上。
 玉座の間との距離からして、多分、王族の寝室。

「………………っ」

 理解した瞬間、頭から足先まで血の気が引いた。
 レゾネクトの唇が、私の頬に触れる。
 アルフがキスしてくれた場所に。

 嫌……嫌だ。
 アルフの温もりが、アルフの熱が消されてしまう……!

「マリア」

 闇が深すぎて。
 何度唇を重ねられて
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