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逆さの砂時計
解かれる結び目 13
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をする。

 顔は闇に隠れていて見えないから良い。
 でももう、声だって聴きたくない。
 そのまま息絶えて欲しい。

 無理なのは、分かっていたけど。

「解らない……。そう。解らないな。愛する者。愛する行為。生きる意味。俺が、勇者アルフリードのようにお前を愛すれば、解るのか?」
「!?」

 闇の中から腕が伸びてくる。
 冷たい両手が私の頬を包んで、紫色の虹彩が迫ってきた。
 嫌悪感で全身の産毛が逆立つ。

「いやっ! 触らないで!!」

 丸く切り取った圧縮空間を、眼前にいくつも作り出して、破裂させる。
 連鎖する小さな空気の爆発が、レゾネクトの手を少しだけ退かせた。
 その隙に、空間を移動する。

 どこでも良い。
 この男から離れたい。
 離れて……

「マリア」

「……──っ!?」

 何故。
 私は今、私一人で、空間を越えた筈。
 少なくとも玉座の間には居ない筈なのに。

 どうして、レゾネクトの声がするの!?
 私には指一本触れてなかった。
 一緒に移動するなんて、ありえな……っ

「っ、ぅあ!」

 目の前に伸びてきた白い手が。
 私の首を強く掴んで持ち上げ、背中を壁に押し付ける。

 ……『壁』?
 ここは、王城のどこ?

「勇者アルフリードがお前と体を重ねて気付いたように、俺もお前を抱けば理解できるのか?」
「…………っ!?」

 背筋に怖気が這い上がった。
 私とアルフの関係を知ってる。
 どうして……

 ああ、そうか。
 どういう技でかは知らないけど。
 この男は、世界樹の生命力と『記憶を共有する力』の大半を奪ったんだ。
 その力で、アルフの記憶を見た。

 この男は……どこまでもアルフを愚弄(ぐろう)する……!!

「だ、れが……! 貴方に、などっ!!」

 空間を移動して、背中の支えを無くした体がカクンと落ちる。
 私の首を掴んだレゾネクトの手はそのまま。

 でも、それで良い。
 ()()が目印になる。

 膝を落とした瞬間、足下に落ちている固い感触を指先で確かめ……
 持ち手を掴んで体に引き寄せてから、勢いよく前面に突き出す!

「が、っ!?」

 柄を通して伝わる、肉を刺した振動。
 レゾネクトの手がわずかに跳ねて、私の首から離れる。

 ……誰かの体を刃物で突き刺すなんて、すごく嫌な手触りだ。
 痺れにも似た震えが、腕全体に骨まで染みつく感じ。

 アルフ達はずっと、こんな思いをしていたのか。
 誰かを傷付ける痛みや、恐怖や、苦しみを、全部。
 あんなにも優しい人達に押し付けていたのか!
 私達、人間や神々は!!

「貴方だけは……貴方だけは
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