月下に咲く薔薇 3.
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「おい! このバラをミシェルにプレゼントしたのは誰か、知らないか?」
「え? ミシェルに?」
「それ、ミシェルが貰ったのか!? 貰った方なのか?」
クロウとデュオが色男をまじまじと見つめれば、ミシェルがふっと笑いながら細身ならではのポーズを決める。
「今朝、俺のメサイアのコクピットに置いて行った女性がいるらしくてね。棘付きなのは、ガードが固い証かな」
「見ろ! おかげで、ミシェルは朝から使い物にならなくなった。それで私が取り上げたのだが、贈り主の想像を始めたまま今も戻ってこないのだ」
「そ…、それは大変ね。少なくとも私じゃないから、安心して」
硬直する琉菜を見、一体何を思ったのか、「よし! 私はこれから、他の女達に会ってくるぞ!」とクランがいきなり踵を返す。
「ダメだ、クラン」
咄嗟にゼントラーディ戦士を制止したのは、のぼせていた筈のミシェルだった。声には力が入り、先程までのうっとりした物言いからはかけ離れた圧力を語気に滲ませている。
「バレンタイン企画の手伝いは、お前が志願したんじゃないか。なのに、もう投げ出すとはね。ちょっと無責任すぎるだろう」
黙ったまま下唇を噛み、クランはミシェルを見上げていた。
「どうする? 打ち合わせに行くのか、行かないのか」
「…て、手伝いたい。私は手伝いたいぞ、ミシェル!」
次第に大きくなる声で、クランは2つの願望から1つを選び取る。
「それでいいんだ。行くぞクラン」
「ああ! 大山達が待っているからな」
段差のついた2人が歩き始めると、やりとりに飲まれていたロックオンも我に返る。
「行くとしますか、俺達も」というリーダーの声を合図に、クロウ達も移動を始めた。
「しっかし、棘付きのバラを贈るってのは、普通なら無しだよな。ちょっと微妙な関係だったりして」
クロウの前を歩くデュオが、ふとそんな感想を漏らした。色男の人間関係について想像を膨らませているのか、波乱の予感に少年の口端が歪む。
「でも、バトルキャンプにいる誰かなんでしょ?」
琉菜が話に加われば、「まぁ、そういう事になるんだろうけど」とエイジが返しかけ途中でやめる。
怒声が工作する他人の色恋は、第三者にとってつまらない話だ。勿論、うっかり前を行くクランの逆鱗に触れてしまうのも面白くない。
案の定、バラの話にクランは聞き耳を立てているし、これからあの2人と共に行動するのだから、バラを意識の外に追い出してしまうのが賢明な対処法のような気がする。
クロウはそう決めてから、エイジ達も同様の事を考えているのだろうと推察した。
色男に贈られたという美貌のバラ。
デュオの言う通り、その一輪は既に人間関係に小さな波風を立て始めていた。
贈り主が敢えて今を選んだのは、黒の騎士団の件と密会の失敗でストレス・ゲー
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