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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 3.
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分とミネラルをしっかり摂って下さい。特に水分は、この後の食事だけでは全然足りませんよ」と声をかけてゆくのだから、本当の狙いは運動後にあるのではと勘ぐりたくなる。
 それを「はい!」と目を輝かせ受けているのは、シン。既にクール・ダウンに入っているようだ。
 一方で、厚着を避け立ったまま冷気に身を晒しているロジャーは、和やかな空気から1人自らを切り離していた。動きとしては目立ったもののない鍛錬だが、流石はロジャー、やっている事はかなり高度な部類に入る。呼吸によって筋肉の緊張と弛緩をコントロールしているネゴシエイターなど、他の次元を見回してもビッグオーの操者しかいないのではないか。
「この中に黒の騎士団は…と」
 つい探してしまうクロウは、皆から相当離れたところで1人佇む長身の男を見つけた。あの背格好と張りつめた気配、四聖剣を率いる藤堂のようだ。太平洋に体を向け、ロジャー以上に今は何をするでもない。
「背負っちまってるな、あの背中は」
 独りごちるクロウに、ロックオンは何も言わなかった。
 背負っている。そうだ、ZEXISは皆既に大きなものを背負い込んでいる。クロウが1人傍観者めいた物言いをしてしまうのは、リモネシアの件が秘めた決意である為。そして、スフィアなる人外の存在からは目を反らしている為だ。
 ロジャーや万丈がもたらした話は、確かに筋が通って聞こえる。異常な領域にあるアイムの執着と謎めいたアサキムの言葉。スフィアについてZEXISよりも明るいZEUTHが言うのだから、謎が解けてゆく際の開放感は本物ではあるのだろう。
 しかし、実感という枠の外に出てしまうそれら夢物語のような話を、クロウは容易に取り込む事ができなかった。借金や金といった具体的な束縛と同様に、スフィアなる存在がクロウに深く根を張ったなどとは。
 人間1人に抱えたり背負ったりできる重荷など、所詮総量がしれている。アサキムはZEUTHと、アイムは自分と因縁浅からぬようだが、連中を再び衝突するであろう難敵と解釈するならば、多額の借金は日々のクロウを圧迫する最大の脅威に相当する。
 いずれも難儀な存在だとしても、クロウ個人の問題として大きく横たわっているのは、誰もが認める通り後者だ。ならば自分は、後者の為にあがいて生き、借金を完済する。その重荷だけと向き合おう。以前にクロウは、そう決めていた。
 戦争根絶の志だけでなくソレスタルビーイングまで背負ってしまったチームの心的柱、ロックオン・ストラトス。親しくもあり共通点も多いが、やはり彼は自分には真似のできない生き方をしている。
 金に執着し敢えて俗物である事を選んだクロウと、身を捨てて大事を成し遂げようとするロックオン。2人の在りようは、まるで水と油だ。最大の差は、それこそ覚悟とやらの大きさにあるのかもしれない。
 運動を終え
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