月下に咲く薔薇 3.
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復が早いのは、戦士として単純に嬉しい。実際には、トレミーの中とバトルキャンプで睡眠時間を2回に分けていた訳だが、横になれば回復する。それがZEXISのパイロット全員が持つ能力の一つだ。
突然何が起きるのか。それは誰にも予測する事ができないのだから、体力と気力を積み増し有事に備えておけるのなら、睡眠時間分の平和には素直に感謝をしよう。
「するか? ランニング」
突然、ロックオンがクロウを屋外へと誘った。
「そうだな。折角のバトルキャンプだ。平地のありがたさってやつを、足の裏で満喫するか」
「ああ」
軽く水分を摂った後、2人は白い息を吐きながら朝のランニングを楽しんだ。
吸い込む冷気で鼻が痛くなるのも構わず、手袋と服だけを頼りに凍った風を切る。耳は感覚を失い、頭皮は気温を嫌がり幾らかの痛みを訴える。これが本当の日本の冬の朝かと納得したところで、クラッシャー隊の本拠地が静岡の南端にある事をしみじみと実感した。
同じ時刻の龍牙島ならば、気温が1〜2度は高かろう。自分が今いる場所は、昨日まで過ごしていた離島ではない。都市と、首都と地続きにあるバトルキャンプなのだと感覚でも理解する。
岬の一つを要塞と化したこの基地は、陸路が県内に開け、空路で海上からの進入を許す独特の構造を持っている。クロウ達が走っているのは敷地の北端で、塩の香りが強いものの、距離的には海よりも基地外の土地の方が遙かに近い。
基地の外には、極普通の日常がある。
バトルキャンプに不吉な黒煙を立ち上らせたくはないな。もやもやを払拭しようと、クロウは弱い日差しの蒼天をくっと仰いだ。
白息の噴霧は、屋外のあちこちで起きている。クロウ達の前を闘志也とキラケンが、後ろからはアルト達SMSのパイロット達がほぼ同じペースで走っている。
「おはようございます!」
これから走ろうという者達を追い抜く際、ストレッチを始めたばかりの甲児とさやかから挨拶をされた。
料理と家族を愛している一学生とそのガールフレンドが、軍属やレジスタンスと共に早朝のランニングを必要と感じる。光子力に深く関わった者が、ZEXISの中でどうありたいかを自問し続けた結果なのだろう。
甲児達だけでなく、強大な力を手にした者達は皆自分に厳しい。まるでそれが義務であるかのように、早朝の自主的な体力づくりを日課に組み込んでいる。10代、20代。更には、もっと年季の入った者達であろうとも。
レントンとエウレカの2人に柔軟運動を手伝ってもらっている大人は、大柄な竹尾ゼネラルカンパニーの厚井常務。21世紀警備保障の大杉課長は、走らずに体操だけをし食堂に向かった。だが、この2人は基地滞在時・出撃後を問わずかなりの早起きをする事で知られている。
大杉などは帰り際、皆に「わかっているとは思いますが、運動の後は水
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