第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
19話 世界の裁定
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ルネルの鋭い叫びに振り向くと、矢筒を悔しげに見るティルネルの姿が映る。どうやら残弾を撃ち尽くしたらしく、苦い表情が目に映る。
「剣と盾を捨てろ!駆け抜けるぞ!」
「………い、嫌………嫌ですッ」
武装の放棄を頑なに拒むティルネルを余所に、これまで矢による遠距離攻撃によって距離に余裕のあったモンスターの前線との距離も狭まり、確実に追い込まれている。《弓術》スキルを失ったシューターはほぼ無力化されたも同然であり、防御力も低いために、モンスターに多対一で囲まれれば長くは保たない。食い止めなければならないのだが、数が多すぎる。
「くっ、捌き切れない………そっち行ったぞ!?」
「………ッ!?」
ついに俺のキャパシティを超えたモンスターは、横をすり抜けてティルネルに飛び掛かった。しかも俺を突破したモンスター《ロアリング・ウルフ》は飛び掛かりのモーションで相手に圧し掛かり、多段ヒットする噛みつき攻撃を繰り出す。押し倒される形になる為、当然《転倒》の判定も取られるだろう。その隙に追撃を受ければ、HPの全損は想像に難くない。
「………いッ………いやあああああああああッ!」
ティルネルの絶叫が耳を劈き、重い金属の音が響く。
手近な蜘蛛を斬り裂き、飛び掛かってくる狼の顎目掛けて《体術》スキル単発技《昇閃》のアッパーをカウンター気味に叩き込む。海老反りになってやや離れた樹に激突するのを音で確認しつつ、慌てて背後を確認すると、背負っていたタワーシールドを地に着けるように構えて狼を受け止めるティルネルの姿が映った。本来装備することの出来ない大盾を用いて防御しただけでも目を疑うような光景だが、生死の懸った状況で関心などする暇もなく、後退して援護に向かおうと踵を返す。
「………今度は………違う! もう、負けないッ!!」
しかし、俺が動き出す前にティルネルはタワーシールドを蹴り上げ、狼ごと弾き飛ばす。ノックバックしながらも着地と同時に再度襲いかかる狼に向けて、ティルネルは腰のアニールブレードを引き抜き、立ち上がりつつ真一文字に振り抜いた。
――――その刀身に、ライトエフェクトを纏わせながら………
「はああっ!」
振り抜かれた刃は狼の開かれた咢を裂き、刀身は易々と大型犬ほどもある巨体を両断。その気迫がダメージに上乗せされたが如く狼のHPを全損させてポリゴン片へと変え、先程俺が蹴り飛ばした狼をも《バーチカル》で一閃、叩き斬る。
「ティルネル、お前………?」
「………思い、出した………私は………いいえ、大丈夫………です」
訥々と呟くティルネルの傍に寄り、安否を確認する。
見間違える筈もない。ティルネルは片手剣を振るい、ましてやソードスキ
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