第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
19話 世界の裁定
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ヒヨリはそうしていたのかも知れないと思いつつ、俺はあくまで一人の仲間として、耳を傾ける事とした。
「その夢の中で、私は人族の少女だったんです。別の世界に住んでいて、この浮遊城に来れたのだって本来のナーヴギアとやらの所有者である父が外出したことによる偶然でした。魔が差したといって良いかも知れません」
「お前、今………」
ナーヴギアと言ったのか? と問いかけてしまいそうになったが、言葉を溜飲し、代わりに襲い来る狼を両断する。追及は全容を聞いてからでも間に合うと思った。いや、それ以上に、踏み込んで良いのかを躊躇ってしまった。恐らく、彼女の正体の核心にあたる内容だ。何故だか、不用意に問うと目の前の黒エルフが居なくなってしまうような、そんな気さえしてしまったのだから。
「この浮遊城に来て、すぐに二人の仲間にも出会えました。現実と変わらない鮮やかな世界で、素敵な仲間と共に旅が出来る。その時の私はこの上ない歓喜を感じていました。………ですが、どうしても外の世界に戻れなくなって、多くの人族は怒り、嘆き、立ち尽くし、この世の光景とは思えない惨状でした」
「………それは」
知っている。ティルネルの夢で見たという光景、それは紛れもなく第一層でのチュートリアルだ。しかも、まるで直接見てきたかのような正確さで言い表している。あの地獄のような光景を、このエルフの女性は記憶として認識している。
しかし、なぜ、いくら自問自答しても、答えなど出なかった。出るはずもない。NPCという枠組から外れた彼女はしかし、その惨劇をただの情報として認識しているわけではないようにも思えた。そして、確実に言えることは一つだけだ。目の前で徐々に数を増すモンスターに顔をしかめつつ、《ホリゾンタル》の大振りの薙ぎ払いで周囲を払いのける。
「私は何とか姿形の変わった仲間達と再会し、一人の少女に手を貸し、四人での隠遁が一週間ほど続きました。ある時外に出て、ある人と出会って、この世界と戦う決意が固まって、仲間達も賛同してくれて、みんなと、ここまで来たんです………でも………私は………皆に生きて貰いたくて………」
言葉を途切れさせながらも語るティルネルの夢は、彼女の持ちうる情報ではない。プレイヤーである何某かの記憶であるということ。それだけは、確証を持っていいだろう。
それが誰かは定かではないが、しかし如何ともしてやれない無力感に苛まれる。恐らく、ティルネルの言葉から察するにそのプレイヤーのアバターはアインクラッドには存在してないのだろう。どうして彼女はティルネルに自分の記憶を託したのか。如何にしてそのような現象が起きたのか。知る術が俺にはなかった。
「………ッ、矢が!?」
感情を押し殺したかのような穏やかな独白から一転、ティ
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