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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
19話 世界の裁定
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 腰に佩いたアニールブレード、背に背負うタワーシールド、矢を番えたショートボウ。
 既に一介の《ダークエルヴン・シューター》の容姿と掛け離れた重装備は、しかし彼女の鋭い面差しもあって不思議と違和感が薄れている。モンスターやNPCがプレイヤーの装備品を身に付けるという事それ自体が在り得ないのだが、その事は一旦保留としよう。


「ティルネル、お前気絶してただろ。それに、どうしてここが分かった?」
「まじない、ですよ。《風精の足跡》と言って、人の所在を教えてくれるんです。どこにいるかという簡単な情報しか知り得ませんけど………って、今はそれどころじゃないですよね?」


 どこか無理に作ったような笑顔で俺に答えを返すと、ティルネルは背後の茂みに向けて番えた矢を放つ。如何なる技か、薄緑のライトエフェクトの閃光を宙に残して飛び立ち、次の瞬間には犬の悲鳴のような高く細い鳴き声が響き、喉元に矢の刺さった狼型のモンスター《ロアリング・ウルフ》が正面に転がり込んで爆散する。弱点をピンポイントで攻撃したとはいえ、遠距離武器のセオリーである火力の心許なさを大いに覆す破壊力だ。


「………包囲されています。しかも結構な数が来ますね、どうします?」


 ティルネルは長い耳を動かしながらこちらに方針を問いかけてくる。寝袋で転んだ時とは打って変わて、《まじない》なる特殊スキルに加えて、索敵範囲も広いらしい。サポートとして想像以上に優秀なようだ。
 ともあれ、魔物の数も多いとなれば、無理に突破するのは至難だろう。《弓術》スキルの瞬間火力をアテにして戦闘を行っても良いのだろうが、相手の数も知れない以上は悪手に為りかねない。それに、ピニオラの拘束も叶う事ならば行いたいところだ。願わくば………


「リンさん、来ます!」
「………っ、くそ!」


 思考を止め、思わず毒づきつつ飛び出してきた蜘蛛型のモンスター《シケット・スパイダー》を《ホリゾンタル》で斬り裂く。戦闘時にヒヨリが傍にいないのは戦力的にも痛手だが、それでもティルネルが居てくれている。幸い人数も少数であれば、敵の布陣を突っ切る形で突破するしかないか。後ろの渓谷に飛び込むというのも戦闘を脱する手段だろう。しかし、流れが急な上に、この流れの先は層の外側。ベータ時代は一部の酔狂なプレイヤーがウォータースライダーとして楽しんでいたが、今は第一層の黒鉄宮ではなく地獄の窯の底に辿り着くことだろう。それだけは避けたい。押し寄せるモンスターは幸い、虫や獣のようなものが殆どで、対処さえ間違わなければ安全に仕留められる。ティルネルの援護射撃もあって現状は然して問題はないのだが、状況は膠着している。ピニオラの捕縛と主街区への退避が現在における最良の目標だが、湧いてくるモンスターの数が多い。思わず歯噛みすると、
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