第六話:嵐の前の、長い静寂
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わり担任が教室を出て行き、周りで楽しげに響くクラスメイト達の声をしり目に、俺は用も無いのでさっさと教室を出て校門まで歩く。
「おー、りんとー」
「……」
校門付近までさしかかったその時、後ろから小さく聞こえて来る、間延びした少女の声を無視して歩く。
「りんとこのやろー、シカトすんなー」
「……」
関わった所で碌な事が無い、俺はこの十五年間でそれを覚えた。身に染みるほどに、覚えさせられた。
だから、無視を続けてただ歩く。
「シカトすんなっていってんだろー、おらー」
「……チッ」
鈍い風切り音が耳を突き、俺は後ろに肘を伸ばして、その音を生み出す元を止める。小さなうめき声と共に、その “元” は止まった。
僅かに顔を傾けてみれば、幼馴染その1である山本理子が、掌を抑えて痛がっていた。
「何すんだりんとー。無視したそっちが悪いだろー」
「今までの自分の行いに鑑みろ」
「何だそれー。訳わかんねーこと言うなー」
気分が乗っている時に邪魔をされた為か、ついやり過ぎたかという思いも浮かんだ。
が、自分の行いを記憶から吹き飛ばしている、この彼女のアホウな言葉……やはりそんな事考えるんじゃなかった。
極論になるが、今まで自分が行ってきた理不尽は、全て正しい事なのだと言いたげ。もしそれを本当に考えているなら……酷く癇に障りそうだ。
「一緒に帰ろうぜー。途中までは一緒だろー」
「……勝手にしろ」
払っても払ってもひっついてくるのは承知の事、なら放っておくのが一番だ。理不尽な行為を此方へ振るってきたのなら、それ相応の態度で対処すればいいだけだろう。
そもそも何故俺なんかに引っ付いてくるのかが分からない。これまでの態度を考慮すれば、寧ろ離れて行く方が妥当だ。
そんなに他人をボコるのが好きなのか……いや、正しくは『俺』をボコるのが好きなのか? か。
まあ理由が何であろうと、単に腹が立つだけなのが、こいつの珍しい所だが……普通なら、何かしら良心を刺激したり、納得できるに足るものが存在する筈なのに。
「明日から夏休みだなー。りんとは予定あるのかー?」
「……」
「って無いよなー。オジさんもオバさんも忙しいし、旅行できる筈ないよなー」
「……」
「何か喋れよー、りんとー」
「……」
聞くまでもない事を態々聞いてきておいて、なら一体如何いった反応を返せばいいと言うんだ?
下手に返せば平手を打ち込もうとする……そんな鬱陶しい事態は無言で回避するに限る。
ちなみにこいつは、東京に居る両親の元へ行くのだと、数日前からずっと聞かされたた
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