第六話:嵐の前の、長い静寂
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あの身体の痛みから始まった、味覚や嗅覚の異変から早くも半年近く経った。
無事に高校入学試験も突破し、小うるさい教師を撥ね退けて漸く少しは平穏を手に入れられる。少なくとも、俺はそう思っていた。
だが……現実は非情だ。
俺に襲いかかった不運を大きく分けるなら、まず一つ目は高校の選択を間違えた事にあるだろう。
自分の身の丈に合った物だけを選べば最後まで後ろ指を指され、あの煩わしい教師どもに最後の最後で嗤われると思い、俺は自分の実力で付いて行けるという条件を入れて、しかしそれでもなるたけレベルの高い高校を選んだ。
結果はもう話したとおり受かる事が出来たし、勉強にもそれなりに付いてけているので、この選択は間違いではなかったんだろうが…………それとは別に、俺にとっては大きく、そしてハタ迷惑な “問題” がひっついてきた。
俺の通える範囲中で、そして前世でもそうだった為迷く事無く選んだその進学校は、あろう事か兄貴が通っていた学校で、結局兄と比較される事から逃れられなかったのだ。
そもそも俺は、兄の嫌がらせはとことんイライラさせられたし、それなりにに反抗してこそいたものの、だからと言って彼の通っていた学校や行った行動すべてが記憶に残っているかと言えば話は別。
ただ普通に時の流れの中過ごして来た人間ならまだしも、こっちは大学まで行ったのに、何時の間にやら別世界で別の人間になっていたという、フィクションまっしぐらな有り得ぬタイプの人間なのだ。
オマケにイライラしていた理由の大半は、本来年下である筈の男に反撃できない事と、相手のやり口が一々用意周到かつ―――歳が歳なのだから仕方ないが―――子供染みていたからであり、小学校ごろの歳によくある負けず嫌いとは……また少しだけ違う。
また、調べてみればこの学校を大丈夫だと誤解した理由の一つに、『最近できた』学校に抜かれてしまっていた事もあるだろう。数年前……つまり出来る前なのだから、兄貴がそこへ入学していよう筈もない。
入学して兄が居た場所なのだと分かってしまった時、今更転校するのも逃げた様で嫌だし、何より嫌味に我慢すればいいので逃げる必要もないだろうと、俺は普通にこの学校へとどまった。
……中学校よりもストレートなモノばかりで、普通にイラついたが。
二つ目は、幼馴染である “山本理子” が付いて来てしまった事にある。
隠し事や嘘でぶっ叩いてくる事は少し減ったが、かと言って無くなった訳でもなく、また少し前から読み出した“少年マンデー”という、何処かで聞いた事のある漫画雑誌に連載中の『海のオリオン』と言う漫画をいたく気に入り、少しでも貶すと(俺にその意思が有る無いに関わらず)暴力を入れ
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