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IS〈インフィニット・ストラトス〉駆け抜ける者
第30話
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長話をする意味はないので、率直に問いかける。

「…また、『銀の福音』と共に空を飛ぶ気はありますか?」
「…何が言いたいのかしら?」

嫌味と思われたか、剣呑な雰囲気が出てくる。が、俺が手の上に出した物を見て、息を呑んだ。

「…何時かまた、伸び伸びと大空を飛ぶ『コイツ』の姿を、俺に見せてくれますか?」
「…何よりも飛ぶことが好きだった…私を守るために望まぬ戦いに挑んだ優しい子…。その手の小鳥…貸してもらっても?」
「どうぞ。元々貴女のものです」

彼女に手の小鳥、銀の福音を手渡す。愛しそうに、名残惜しそうに一度胸に抱くと、俺に返した。

「…あの子に『ありがとう』って言われた気がするわ。…また見せてあげる。この『ナターシャ・ファイルス』が銀の福音で空を飛ぶ姿。またね、操縦者君。」
「…失礼します」

福音の操縦者、ナターシャに頭を下げ、その場を去る。また福音とナターシャが一緒に空を飛ぶ約束ができた、今はこれが出来る精一杯だろう。

手の中の小鳥を見ながら、俺の足は無意識に外へと向かっていた。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

夜の海は静かなもので、満月の光が照す海面は幻想的な美しさがある。

誰も何も言わなかったが、手の中の福音は少ししたら凍結処理が施されるという話だった。しかし今なお福音は俺が持っている。今からでも先生に渡した方がいいか、と考えていると、胸を光が貫いていた。驚愕で体が硬直すると同時に、力が抜けていく感覚、しかし生命的なものでない、この感じ…!

「そう、アナタから吸収、…違いました、『返してもらっている』だけです。『私のIS』の力を」

背後から発せられる少女の声、振り向きたいが、体が動かない。

「本来なら、私が『この世界』で色々出来る筈だったのに…、ですが、今となってはどうでもいいです。もうすぐ『消える』人間に文句は無粋ですから」
「き…消える…、だと…?」
「はい。我々を『転生』させた存在曰く『手違い』らしいので。運が無かったと諦めて下さい」

そこで言葉を切ると、胸を貫く光の強さが増す。俺は指一本動かすこともできず、視界は光が呑み込んでいった。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

丹下智春から力を奪う、もとい取り返した少女は、消失した智春がいた痕跡、砂浜の足跡を冷たく見つめる。

「これでイレギュラーは無くなり、本格的に動けますね…あれ?そう言えばあの男…、手に何か持っていたような…。まあ良いでしょう。どうせ『この世界』でのあの男の『関連性』は切れた。誰も何もあの男を認識できなくなったのですし、もう会うこともないでしょうし」

この時、少女は智春と一緒に消失した手の上の物体を詳しく調べるべきであった。この少女がそのミスに気付くのは、後の話になる。


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