第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
1人だけもはや別宗教
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か、と。
とはいえ、今ここにいない人の責任を追及しても事態は前進も好転もしない。それが社会の動かし方で、会社の動き方だ。そのあたりを嫌というほどよく知っているerg原画家はスクールバッグを開け、底のほうに埋もれていた手のひら大の缶ケースを取り出す。
「傷口は洗ったの?」
「ああ。さっき改めて洗ってきた」
「けどよ匂坂。これそんな酷い傷じゃねえし、放置でいいんじゃね?」
「うん。これくらいならいいと思う」
「まあな。血も止まった感じだし、これで――」
「ちょっと待って匂坂くん」
星河と昴にGOサインをもらい、雅紀は血も止まった様子の傷口を一目見て部活に戻ろうとするが、それを制したのは珠希の声だった。
「肘見せて。絆創膏張るから」
「え? 別にいいって。これくらい」
「そっち、利き腕の肘でしょ? 部活戻って動かしたらまた傷開くじゃん」
「そ、それはそうだけど――」
「だったら部活中だけでも貼っておきなよ。アスリートさん」
一般的にイメージされる絆創膏よりも大きい、5センチ四方の白い絆創膏を手に待ち構える珠希に、雅紀はやんわりと大丈夫を連呼する。
しかし長女――ではなく、困ったときはお互い様だと裏表のないお節介さを持つ母親気質を出した珠希の押しに勝てるわけもなく、まさかの同級生二人の眼前で雅紀は珠希に擦り剥いた右肘の外側を見せる羽目になってしまった。
それは時間にしてわずか一分にも満たない行為だったが、自分の右肘の外側に絆創膏を貼ってくれる珠希と、その手際の良さをじっと見つめる星河と昴。その様子をどこか第三者的視点で見ていた雅紀は、これは何の羞恥プレイだろうかと部活に戻ってから思い返していたとかいないとか。
「……ま、こんなもんかな」
「ありがとう。竜門さん」
「別に気にしないでいいよ、これくらい」
利き腕である右の肘の外側という、一人ではなかなか貼りづらい箇所に絆創膏を貼ってもらった雅紀は、傷のある辺りを軽く絆創膏の上から触りながら感謝を示すと、小心者は小心者なりに精一杯の表情を取り繕って答える。
小心者は小心者でも、珠希の場合、元がかなり出来のいい美少女なのだから、取り繕って浮かべたはにかんだ表情も相当な破壊力を秘めていたりする。
「え? あ、そう?」
「うん。治療費は昴くんに請求するから」
「また俺かよ! お前、俺に何か恨みでもあんの?」
先程のお返しとばかりに自分の堪忍袋に鋏を近づける珠希に、昴は即座に食い掛かる。
「そうだね。七代くらい前からかな」
「うわ、結構昔から祟られてるね。昴」
「てめぇ。女狐よりも狡い神経しやがって」
「それで昴くんが将来悪い女に騙されなきゃいいんじゃない?」
「あ、それならそれで――」
「星河っ! お前
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