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竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
1人だけもはや別宗教
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ぶりに呆れていた。

「あの、えっと……」
「ん? あ、えーと、若宮くん……だっけ? 隣のクラスの」
「あっ、は……、はい」
「そこまで畏まる必要ないよ。同じ1年なんだし」

 星河が恐る恐る声をかけると、雅紀はライトな感じで返事をする。

「す、すみません」
「こういうときに謝るのは逆に失礼だと思うんだよね」
「そ、そうですね。気をつけてはいるんですけど」

 今年から同じ高校の、同じ1年生でありながらここまで違うのかと互いに思いながら、あまりに気弱で下手に出すぎている星河の態度に、雅紀は、今の今まで話したことも相手だからこそ率直に意見を告げる。
 とはいえ、自分の嗜好や思考を押し付けすぎないところは雅紀が相手のスクールカーストの階層関係なく付き合えている理由の一である。強く押し付けると反発するのが人の常。何でもかんでも吸収して自分のものできる人間がこの世には――特に、今まさに雅紀の目の前にて昴と口論に発展しかけている少女など――いるが、雅紀は自分がその稀有な例に含まれないことを知っている、自己批判ができる知性的で理性的な人間だった。


「まあ、若宮くんの場合、この二人のせいかもしれないけど」
「えっ?」
「若宮くんは別のクラスだから知らないかもしれないけど、この二人、クラスでも比較的浮いてるからね?」
「そうなんですか?」
「嘘じゃないよ。だから若宮くんがその子守役なのかな、と」

 幼稚園よりも前からずっと一緒だった冷血系と周囲から言われている情に厚い幼なじみと、入学式の日に初対面の自分を咄嗟ながらも介抱してくれた心優しい少女だけが唯一まともに会話できる相手という星河は、既にクラス内での立ち位置を確保している雅紀の証言に正直驚いていた。
 同じ学年の自分に教えられるくらい頭がよく運動神経も人並み以上の昴と、男女差という言葉は無縁だと言わんばかりに昴に匹敵するくらいの知能と運動神経を持つ珠希が、クラスにまったく溶け込めていないとなると、星河は自分のことを差し置いて心配になった。


「ところでさ、三人とも保健室の先生知らない?」
「え?」
「あん?」
「どうかしたの?」

 何の脈絡もなく等々に話を変えた雅紀の質問に、星河も、口論していた昴と珠希も視線を雅紀に向けた。

「保健室行ったら鍵かかっててさ、職員室にも先生の姿なかったんだよ。他の先生たちも保健の先生がどこに行ったか誰もわからないって言うし」
「マジかよ」
「でもそれは困ったね」

 男子3人の会話をよそに、珠希はふと入学式の時のことを思い出していた。あの日、星河の意識がまだ戻っていないことをいいことに、珠希の眼前で人助けを割に合わないとばっさり切り捨てたあの女性養護教諭(BB○)、ついに仕事放棄(サボり)やがった
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