第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
1人だけもはや別宗教
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プでね」
「それってどうしようもないってこと?」
「ま、まあそうなる前にどうにかしたいんだけどさ、僕も」
小さく苦笑する星河を見て腹を決めた珠希は、星河の陰に隠れたままそーっと手を伸ばし、昴の制服のブレザーの裾を掴むと、くいくいと軽く引っ張る。
「んだよ?」
「ちょ、ちょい昴くんトーンダウン」
「あァ? だから何だよ?」
「ごめん間違った。トーンダウンじゃなくてクールダウン」
「は? 何言ってんだてめぇ」
「あぅ……」
冷血系が熱を持つと恐い。
間近で昴に睨まれ、言い間違いまでやらかした珠希はさらに星河の陰に隠れる。
この小心者少女の素を知る者たちから最小限の揶揄と最大限の畏怖をもって「キレるとキロネックス」と言われてきたのだから、本気で今だけでも透明になりたい気分だった。
しかもこういう場合、一度ついた火はなかなか消えないことも知っている。無駄な争いはしないに越したことはないし、ましてや戦争は破壊と消費と衰亡しか生み出さない。後に残るのは高レベルの戦術的テクノロジーと心神耗弱した人々と退廃した土地だ。
こういうときこそ、タイミングよく駆けつけてくれるのが某局で日曜朝7時台から放送しているヒーローの在り方だと思うのだが、そのテンプレももう古典的でそうそう上手く事が運ばないのが現実だ。
しかも何でもないような振りして姿を見せるとか――
「……あれ? 相武くんに竜門さん。何してんの?」
………………あった。
ありやがったよコンチクショウ。
何これ? 何のドッキリ? どこかにカメラでも仕込まれてる?
神様とか都合いいときしか信じてないのに、なんで今味方してくれてんの?
小心者のうえに猜疑心が強いとか――友人ができないのは9割8分くらいお前自身のせいじゃね? と言われても文句は言えない珠希は、その場の全員の視線が突如として珠希と昴の名前を呼んで姿を見せた男子生徒に向けられる中、ひとり周囲をきょろきょろと見渡していた。
「何だよ匂坂。お前、部活じゃねえのか?」
「部活だったよ。さっき軽く擦り剥いてさ」
昴の問いに、匂坂と呼ばれた運動着姿のその男子生徒は今も血が滲む右肘の擦り傷を見せて答えた。
「だったらさっさと保健室行け」
「そのつもりだからそこをどいてくれ」
匂坂の言う“そこ”は見事に昴と3年男子が占拠している空間、1年C組の靴棚から最も近い上り口だった。
思わぬ乱入者の登場に3年男子は居心地悪そうに、ふん、と鼻を鳴らすとそのまま3年生の靴棚に向かうと、さっさと昇降口を後にしていく。
「何かあったのか? あの3年生と」
「何もねえよ」
「あ、そ。別に無理矢理聞き出すつもり
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