第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
ヒロイン像ってつまり妄想のかたまゲフンゲフン
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はというと、小学2年生に好き放題やられた屈辱からバスケのレベルをさらに上げ、最終的に県大会準優勝を獲得したものの、一人で彼らに敗北の味を叩き込んだ当時小2の少女は逆に冷めてしまった。
特に何かを頑張ったわけでもない。何か特別なことをしたわけでもない。珠希が『普通』にできることを周囲の子は『普通』にできない。ただそれだけだった。
「なんていうか、やる気が出ないかも。自主的にとかだと」
「そっか。それじゃしょうがないよね」
性格的にも強引に誘ってくるタイプではない星河は残念そうに呟いたが、珠希の発言は真っ赤な嘘である。
今年クラスメートになった女子たちが珠希の言動に距離を置いていると感じるのも無理はないと珠希も本当は自覚している。自分がちょっと本気を出せば周囲の人たちはあっけないほど簡単に潰れ、平々凡々な一般人のカテゴリに埋没していくのだ。
何でもできる、何にでもなれる、というのはそれ自体が一種の権力で、その対象に媚を売るか距離を取るかしないと周囲は自身のアイデンティティを維持できなくなる。誰も珠希ではなく、珠希にはなれない。仮に珠希に近づくことはできても、本気を出した珠希の先は誰も歩けない。だから珠希は自分の本気や全力といったものに蓋をした。これも競争と淘汰を捨て、協調性と調和を求めたこの国の教育の賜物だ。精一杯の皮肉を込めて。
中学時代は――特に中3のときのクラスメートは男子も女子も何でもできる珠希を逆にネタにして笑ってくれるような人たちで助かったが、そんな人たちがこの学校にいるとは限らない。
だが原画・イラストレーターの世界は違う。三者三様の嗜好や時代背景などを受けての傾向で多種多様な“頂点”が存在する。アスリートらが目指す世界一や最強といった“唯一無二の答え”が存在しない。【天河みすず】の絵柄は海外受けするほどの人気があるものの、それを嫌う人もいるように。そんな人たちにも認められるよう、受け入れられるように技術を研鑽するほうが珠希にとってはよほど難しい。
「……けどよ、今思い出したら星河も竜門も部活紹介って見てないよな?」
「部活紹介?」
「何よそれ?」
ふと昴が思い出したのは始業式当日、式の後にあった、この稜陽高校にある部活動や同好会・研究会の自己紹介イベントである。その日、式の最中にブッ倒れた星河と、星河の介抱で巻き込まれる形で退場してしまった珠希は当然一切合切を見ていないし、知らなかった。
「なあ竜門。お前、この後暇か?」
「……暇っていうほど暇じゃないけど、時間は作れるよ」
「どうせなら一通り見ていくか?」
そうは言うものの、本音は「一通り見せたい」のだろう。高校まで一緒のところに通う病弱な幼なじみのために。
それが始業式の緊張でブッ倒れようと他人から
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