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竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
ヒロイン像ってつまり妄想のかたまゲフンゲフン
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、お前が美術部員ねえ」
「いちいち何か突っかかるような言い方するよね、昴くんって」
「2階からダイブする美術部員なんて俺は知らねえからな」
「え? 2階からダイブ?」

 昴が言いたいのは、文化系の部活の住人(元幽霊)が2階から大型トラックの荷台に飛び降りてまでルート短縮し、上級生に絡まれていた星河を救いに行くかということだったが、その一部始終を知らない星河は首を傾げる。

「ちょ、昴くんっ?」
「あのな星河。こいつ、お前が昼飯時に絡まれているのを見て――」
「わー、わー、わーっ! それはあえて秘密のままにしとくのが義理とか人情ってやつじゃないのかなぁっ!?」

 星河と昴の間に割り込み大声で両手を振り、コミカルな仕草で会話を遮ろうとする他人を寄せ付けないほどの美しさを持つ少女。
 実は一皮剥けば黒帯持ちのスポーツ万能にして、特に勉強することなく偏差値70超えの頭脳の持ち主でもあるというのも驚きだが、しかして中身はergのブランド所属の父と官能小説家の母を持つアダルト産業従事者のサラブレッド、その実態は声優オタクの兄と野球バカの弟とJCコスプレイヤーの妹を持つ女子高生にして世界にも名の知られた原画家・イラストレーター【天河みすず】の正体であろうとは星河も昴も知らないことである。

「んだよ。そこは本人のために教えとくのが普通じゃね? 恩を売る的な意味でも」
「返済不可能な恩を押し売りする真似はしたくないんだよ」

 仮に幼い子ども相手に1000万の価値ある品物を贈ってギブアンドテイク(見返り)を要求しても、その額面に等しい対価が即座に返ってくることはほぼありえない。返ってくるにしても数十年先の話で、それほど実は珠希の気は長くなかったりする。むしろ竜門家の4人兄弟姉妹の中では最も気が短いのが珠希であるという両親の証言がある。
 そもそもその両親の証言が一番疑わしいというのが親類縁者の証言である事実も添えて。


「そもそもギブアンドテイクに限らず、返済を見越して借りるもんでしょ?」
「ん、まあな。どっかの国の奴らとは違うからな」
「そこ、余計な火種撒かない。自己破産不可の有利子負債扱いにするよ? トイチで」

 明記しておくと、昴の発言中に登場した「どこかの国」という名前の国を珠希は知らない。本気で知らない。意外と近い距離にあるなんて知らないし、バランサーじゃなくて法則という病に1000年前から侵され、今後1000年も呪われ続けるバランスブレイカーだなんて思ったりもしてない。

 過去に出会ったある【天河みすず】ファンの中国人はマナーもよかったが、そこの国の自称(・・)【天河みすず】ファンは勝手に珠希の国籍を自国民に変えていた。いったいそれで自尊心の何が満たされるのか甚だ疑問であったが、後日ネット上で全
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