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竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
ヒロイン像ってつまり妄想のかたまゲフンゲフン
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珠希だった。が、昴からすればこれ以上珠希の内面を深く探るととんでもないことになりそうだという自己防衛本能に従っただけにすぎなかった、という事実は知らないほうが幸せなのだろう。お互いに。



  ☆  ☆  ☆



「そういえば、珠希さんって何か部活しないの?」

 1年C組の教室を出て昇降口に向かう途中、珠希の隣を歩く星河が何か思い出したかのようにそんなことを尋ねてきた。

「部活? 何も考えてないなぁ」

 ……ってか、どんな部活があるかとか知らないし。

 部活に入れば多少は同級生や先輩と距離を縮められ、何かと会話のネタもできるというものの、このスポーツ万能腐女子の放課後の過ごし方の選択肢に部活入部の文字は一切出てこなかった。
 これでも珠希の放課後は放課後で忙しいのだ。朝にやり残した家事をやって、原画もしくはグラフィックの仕事、夕食の支度に積みゲとアニメの消化まである。
 ――失礼。最後のは余計だった。

 なお、稜陽高校に存在する部活や同好会・研究会の案内や紹介はこっそり始業式の後に行われていたりする。もちろん、星河と一緒に保健室にご退場した珠希がそこで何が起きていたかなど知るわけがない。

「中学で何かやってなかったの?」
「一応美術部員だったよ。ほとんど出なかったけど」
「三年間幽霊かよ」

 昴がぼそりと呟いたが、幽霊部員であったことは否定しない。
 顧問の教師が厳しくなく、体育会系意識とは無縁だった美術部では珠希と同じような幽霊が先輩にも後輩にも何人もいたし、珠希も特に仲の良かった友人3人と一緒に他愛ない話をして道草を食いながらのんびり過ごしていたほうが楽しかった。その3人とはあちこちぶらついては他の部活に茶々を入れたりしたので、幽霊は幽霊でも浮遊霊の類と言えるかもしれないが。

「何か問題でもあるかな昴くん? これでも中学のときから家事全部やってたのに」
「そのうえで部活やってたの? 凄いね」

 驚嘆する星河だったが、そもそも放課後も放課後で家事を取り仕切る珠希に本来、部活をやっているような暇はなかった。
 ましてや、中学時代からグラフィックの技術を磨き、原画家・イラストレーターとして仕事を得るようになっていた珠希にとって、貴重な放課後に音楽室でティータイムなどしている暇はなかった。ケーキを食べ、紅茶を飲みながら――とはあっても、PCに向かっている目的はグラフィックか原画の仕事のためである。よい成果を出さなければ人としての信用問題にかかわる重要な課題だった。

 第一、今日は今日で登校途中に商店街の魚屋の兄ちゃんに取り置きしてもらった桜鯛の下拵えがある。しかも切り身などではなく丸々一匹を買い取ったため、鱗も取り除かなくてはならず、捌くにも時間がかかる。

「けど
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