第二百二十四話 帝との話その十
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「読めぬ、しかし今はあの男の様子を見よう」
「そして次に何をするのか」
「それを見てですな」
「どう動くのかを」
「それを決めますな」
「そうする、ここはな」
こう言ってなのだった、闇の者達は動くその目的を決めてもだった。信長の動きを読みかねていたのである。
このことは誰も知らなかった、彼等がこうしたことを話していたことは。しかしそれでも信長は気付いていてだった。
そのうえでだ、主な家臣達を前にして言った。
「帝から都での馬揃えのお許しが出た」
「何と、都においてですか」
「馬揃えをされますか」
「そうじゃ、それも御所の傍でな」
都の何処で行うのかもだ、信長は話した。
「行う」
「あの、上様」
荒木が驚きを隠せない顔でだ、信長に問うた。
「都での馬揃えもかなりですが」
「それでもじゃな」
「はい、御所の傍でとは」
「帝のお許しは得ておる」
「それでもですが」
「案ずるな、この度の馬揃えは公卿の方々も加われる」
朝廷の彼等もというのだ。
「あの方々もな」
「公卿の方々もですか」
「そして諸大名もな」
「武田家や上杉家、北条家も」
「それぞれ具足や服を用意せよ」
「左様ですか」
「無論御主もじゃ」
荒木もというのだ。
「よいな」
「畏まりました、では」
「十二郎、わしは朝廷を害することは決してせぬ」
信長は荒木にこのことも告げた。
「それにじゃ」
「それにですか」
「わしは天下のことを第一に思っておるからな」
「この度の馬揃えもですか」
「行うのじゃ」
「そうなのですか」
「そうじゃ、武は戦をする為にあるのではない」
では何の為にあるのかもだ、信長は話した。
「戦を止める為、天下と民を守る為にある」
「はい、そのことは」
荒木もわかっていた、武は何の為にあるのかも。こうしたことがわかっているからこそ織田家においても重きを為しているのだ。
それでだ、こう言うのだった。
「その通りであります」
「そうじゃな、だからな」
「この度の馬揃えも」
「帝をお守りする為でもあり」
「そしてですか」
「天下も民も守る為のものじゃ」
まさにというのである。
「この国の全てをな」
「ううむ、そのことはわかりましたが」
荒木はいぶかしむ顔のまま信長に応えて述べた。
「上様は何かを見ておられますな」
「その通りじゃ」
「それが何か気になりますが」
「わしも確かにはまだ言えぬ」
「しかしですか」
「何かがおるな」
「そういえば妙に」
ここで荒木も気付いた。
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