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駄目親父としっかり娘の珍道中
第78話 コンテニューは計画的に
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べてを妹に託す思いで、自分が握りしめた希望の一粒に至るまで妹に託そうと思っていたのだ。
 その為にも、今の鉄矢には語り続ける事しかできなかった。

「今の桜月は多くの人間の血肉を貪り、その力を増大させてる……それに比べて、白夜は逆に力を失っている。今のままではあの男ともども白夜は負ける」
「あの男……それって、銀時の事か?」

 鉄子の問いに鉄矢は頷いた。そして、鉄矢は鉄子に告白した。鉄矢が打った紅桜の中の一つ。岡田が持っていたそれの中には、かつて攘夷戦争で使われていた桜月の欠片が埋め込まれていたのだ。
 紅桜に組み込まれた桜月は岡田の手の中で大勢の人を斬り、その血肉を食らい続けた。そのお陰か桜月の力はかつての力に相違ないほどにまでに至っていたと言える。
 だが、それに対して白夜は酷く衰えていた。白夜は人の血肉を食らう行為をしない。その為に刀は痩せ衰え、その切れ味では恐らく桜月を斬るには至らないであろう。
 今、白夜と桜月の二本のパワーバランスは圧倒的に桜月が優っている状態であった。

「恐らく、他の紅桜はあの男が破壊してくれただろう。だが、残る一本は今のままではだめだ。桜月は例え欠片だけになってもその力は凄まじい。他の武器に寄生し、その武器で人の血肉を食らい続ける。そうする事で桜月はより強く進化しようとしているんだ」
「だが、どうやって……どうやって白夜を完成させれば良いんだ? 私には分からない」
「鉄子、昔親父が俺達に言った事を思い出せ」
「親父が?」
「言っていたじゃないか……刀は魂で打つと……桜月は人の血肉で成長する。だが、白夜は人の魂を注いで成長するんだ。だから、お前の魂で打ち、あの男の魂を注ぎ込む事で、白夜は完成する! そうすれば、桜月を破壊出来る筈だ!」
「魂で……成長させる」
「幸いな事に……まだ桜月は完全な姿にはなっていない。今此処に居るのは桜月のひと欠片に過ぎない。だが、あの男は白夜の本当の使い方を知らない……今、此処で白夜とあの男を失う訳にはいかないのだ!」

 突如として鉄矢は起き上がり、鉄子の肩を掴んだ。力こそ弱ってはいたが激しく震えているその腕から、彼が今必至だと言うのが容易に伺う事が出来た。

「もし、白夜が折れ、あの男が倒れるような事があれば……すべての命は、桜月に食い尽くされる……何としても止めなければならないんだ!」
「兄者……だけど、白夜の使い方なんて私も知らない! 一体どうすれば良いんだ?」
「………」
「兄者? 兄者!! っっ―――」

 鉄子はその場に泣き崩れた。もう、兄の声を聴く事はない。あのバカみたいに大きな声で、何時も人の話を聞かず、一直線に突っ走っていた鍛冶屋バカの兄の声を、もう聴く事はないのだ。
 その事実を知り、鉄子は涙した。張り裂けんばかりの大声で
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