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駄目親父としっかり娘の珍道中
第78話 コンテニューは計画的に
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「だろうな。それじゃ何か? 今度はそいつの体を乗っ取っててめぇ自身で飢えを満たそうって腹か?」
「その通りだ。もうこの際この男は用済みだ。後はこの船内にいる奴ら手当たり次第に切り殺して、そいつらの血肉を食らう。それでも足りねぇだろうから、そん時ぁ江戸の町の奴らを片っ端から食らい尽してやらぁ」

 最早、この場所に岡田似蔵は存在していない。今、銀時の目の前にいるのは凶器と化した桜月その物であった。




     ***




 痛みで意識が朦朧とする。景色がぼやけて余り良く見えない。それでも、目の前に誰か居る事は認識できた。それが誰なのかは―――
 徐々に視界が鮮明さを取り戻していく。目の前にいたのは妹の鉄子だった。目いっぱいに涙を浮かべて、こちらを見ている。何故、何故泣いているのだ。誰がお前を泣かせたんだ。
 訪ねようとしたが、声が上手くでなかった。そして、腹の辺りを触れた時点で、鉄矢は思い出した。
 そうだ、自分はあの時、自分自身が作り出した紅桜に刺されてしまったのだ。
 何とも情けない事か。刀鍛冶が刀に斬られて死ぬなど笑い話にもならない。
 思えば自分は何て愚かな行為をしてしまったのだろうか。偉大な父、村田仁鉄を越えようと一心不乱に刀を打ち続けてきたが、結局出来たのは人を食らう化け物刀であった。無論、そんな物を作るつもりなどなかった。鉄矢はただ、最強の刀を作りたかったのだ。その為に鉄矢は利用出来る物は全て利用した。からくりにも手を出し、資金繰りの為に裏世界に手を伸ばした。すべてはたった一振りの剣の為だけである。
 その結果がこれとは―――

「兄者、兄者ぁ!」

 必至に泣き叫ぶ妹の姿が浮かぶ。兄の身を案じ、必至になっているのだ。
 鉄矢は、ふと思い出していた。あの時、鉄子と共にいた銀時の持っていた刀。一流の刀鍛冶であれば一目見ただけでそれがどんな状態か見分ける事が出来る。
 震える手で、鉄矢は鉄子の手を掴んだ。だが、その力はとても弱弱しく、まるで虫の息の状態だった。

「あ、兄者!」
「て、鉄子……白夜を……お前の手で、白夜を……完成させるんだ!」
「な、なに言ってるんだ兄者!?」
「すまない、お前に後始末を頼むなんて……私は、ダメな兄貴だった。あの刀は、紅桜は私の想像を遥かに超えた化け物に育ってしまった。あれを壊せるのはお前が打った白夜しかない。だが、今の白夜じゃダメなんだ……今の白夜のままではダメなんだ」
「一体どう言う事なんだ兄者? 言ってる意味が全然分からないよ」
「あの時、お前の打った白夜を一目だが見た。一見それは見事な刀に仕上がっている。だが、今の白夜は輝きを失っている。あれでは……あれでは桜月には勝てない!」

 息も絶え絶えな状態でありながらも、兄鉄矢は語る。す
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