第十五章 忘却の夢迷宮
エピローグ 近くで遠い世界にて……
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男から何かを伝えられた女は、逡巡するかのように顔を俯かせる。しかし、男が何処からともなく取り出した一本の剣を差し出されるのを見ると、諦めたように小さく息を吐き、男に向き直り深々と頭を下げ差し出された剣を受け取った。
左手に剣を、右手に一本の旗を持った女は男に背中を向けるとゆっくりと歩き出し男のいる丘から去っていく。
去っていく女の背を見送ることなく、男は暗い空を見上げていた。
空には分厚い雲がいくつも漂っている。
時折覗く雲の隙間から見える光は黄昏に染まっていた。
その時、赤く染まった光が丘の上に一人残った男を照らし出した。
ふと、何か男の心を揺さぶる何かが心を過ぎったのか、男の口元にうっすらとした笑みが浮かんだ。
男は浮かんだ笑みを苦笑の形に変えると、改めて眼前の光景に向き直った。
そこは、荒野だった。
何も生まず、育たない荒れ果てた荒野。
それが、遥か彼方、荒野と空が重なるまで続いている。
まるで無限に広がっているかのような光景。
木々どころか草の一本すら生えていない荒野にしかし、無数に見える何かがあった。
それは墓標のように大地に突き刺さっていた。
目に見える荒野の全てに突き刺さったソレは、この無限に広がっているかのような荒野と同じく無限にあるかのように思われた。
ソレは、剣であった。
様々な形。
様々な時代。
様々な世界に存在する無数の剣が荒野に突き刺さっている。
誰もが驚嘆し、驚愕し、畏怖するかのような光景。
しかし、男の目にはそんな光景は映っていない。
男が見つめる先にあるのは唯一つ、巨大な樹であった。
否―――樹に見える何かであった。
白い、樹のような何かであった。
そして、巨大であった。
首が折れそうなほど見上げたとしても、その樹の頂上を見ることは出来ない程の大きさであった。
太さもまた、同様である。
数十階の高層ビルを遥かに超える高さと太さ。
もはやそれは樹というよりも山のようであった。
男はそれをじっと見つめていた。
不意に、男が顔を顰めた。
男の視界の先にある巨大な樹の表面から、小さな何かがこぼれ落ちていた。
巨大な樹から見れば余りにも小さなそれは、剣であった。
しかしその剣は、大の大人でも持ち上げるのが困難な程の巨大な剣でもあった。
それが、樹からボロボロと落ちていく。
樹に剣が突き刺さっていた?
違う。
そうではない。
樹が剣であったのだ。
正確には、樹は剣で出来ていた。
山の如く巨大な樹の正体は
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