言葉
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「教主殿……そういう心配になる事を言わないでくれ。我の方が心労で倒れそうだ」
「そう重く受け止めるな。ダークマターによる副作用の発作は幾度も経験しているし、こうなるのはとっくの昔に覚悟していた。それにむしろ……この世界から魔力が消失している現在、アレをやるなら丁度良いタイミングかもしれない」
「丁度良い? ……ッ!? まさか!」
「フッ……流石は闇統べる王、理解が早いな。……ディアーチェ、おまえ達が自由を手にする時が来た。“彼女”を……鎮めるぞ」
「ま、待て、早まってはならぬ! 我は教主殿に以前言ったではないか! 12月まで待てば、制御プログラムのワクチンが完成して“彼女”の暴走を鎮めきれると! そうすれば危険も負担も最小限で済むから失敗する可能性をゼロに抑えられると、教主殿も納得していたはずだ! ワクチンが未完成である以上、以前話してもらった作戦はまだ危険すぎる。これまでの間ずっと……我が教主殿の負担を減らそうとして、ようやくここまで漕ぎ付けたのに……まさか先の妄言を真に受けてか……!?」
「違う、今が丁度良い頃合いなだけだ。心配せずとも、俺なら問題ない」
「問題あるに決まっておろうが! 何故だ! 何故教主殿ばかり過酷な目に遭わねばならん!? うぬには我らの王国を共に築き上げてもらわねばならぬ……我らと共に生きてもらわねばならぬ! それが叶わぬ事だとしても、せめて……せめて一緒にいられる時間を可能な限り長くしたい! 共に居られる時間をもっと大切にしたいのだ! その些細な願いすらもこの世界は……運命は認めてくれんのか!!」
心配で必死に説得してくるディアーチェの頭を、安心させるように軽くポンポンとなでる。ヒートアップしていた彼女の頭が冷静になっただろう頃合いで、俺は自分の心情を伝える。
「どうやら……苦労や負担は最終的に俺が背負う運命らしい。そこまで想ってくれるディアーチェの気遣いはありがたいが、俺にも世界にも時間が無い以上、もはや手段を選んでいる場合ではない。大体、これを実行した所ですぐに別れが訪れる訳じゃない。まだ共に居られる時間は残っているさ」
そうやってゆっくり落ち着かせるように言い聞かせ、納得してもらうのを待った。やがて彼女も冷静に状況を分析し、今後の出来事などを想定していくと今の内に“彼女”の暴走を完全に鎮めるのがベストだと理解してくれた。心情的に納得はしていないようだが……家族想いの彼女らしいと言える。そもそも……彼女が思い詰める必要は何一つ無い。その事を改めて伝えておこう。
「ディアーチェ、言っておくが俺は本能に従っているだけだ。おまえ達と“彼女”を助ける。理由なんかいらない、俺がそうすると決めた。余計な理屈や言葉を並べた所で、それは本心を覆い隠す。人間が選べる選択肢は究極的に
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