言葉
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て認識させていただけ。そう、対象が絶対存在でも全てじゃなくてほんの一部だけなら、あのイモータルの力でも支配できる……出来てしまうのよ。そしてファーヴニルの“感覚”を支配したラタトスクは、“エネルギーが充満しているように感じる”ポイントを自分が襲撃したい場所に操作する事でファーヴニルの思考を誘導し、襲撃対象を指定。それで感覚のままファーヴニルはそのポイントを襲い、自らの糧とする……』
「なるほど……ようやくラタトスクがファーヴニルを操れた理由に合点がいった。ついでに絶対存在が“獣”と評される理由も判明したが……、流石にそろそろ訊きたい。何故……エレンはロシア語で話しているんだ? 再会する前も後も、俺達の間では母国語の英語で話していたはずなのに、どうして今だけロシア語なんだ?」
そう尋ねた瞬間、無線機の向こうから唇を噛むような音が聞こえた。しばらく沈黙した後、重苦しい口調で彼女は話し始めた。
『……静寂の獣ファーヴニルは……破壊の獣ヴァナルガンドや、終末の獣ヨルムンガンドとは全く違ったわ……! あのエターナルの脅威は……圧倒的巨体から繰り出される物理的破壊なんかではない! あれは…………“文化”を直接破壊する!』
「文化を……破壊!?」
『主砲発射の直前、危機を感じたラタトスクが突然ファーヴニルに吸収を行わせた。だけど吸収対象は魔力でもエナジーでも、ましてやダークマターでも無かった……。あの化け物が吸収したのは……“言葉”』
「は? 言葉を吸収とは、どういう意味なんだ?」
『そのままの意味よ……。この場にいた者達が交わしていた言語である、英語、ミッド語、ベルカ語、デバイス語が吸収された。おかげで翻訳魔法も役に立たず、大勢の人がいるのにこの場は恐ろしい程の“静寂”に包まれているわ。だって、話す言語が無くなって、コミュニケーションが取れなくなってしまったのだから……。ラタトスクは組織の伝達手段を止める事で主砲の発射を喰い止めようとしたみたいだけど、きわどい所でこちらの方が一手早かったみたいね。だけどその代償は、予想を大きく上回るものだった……』
「ほう……俺もようやく理解できた……。静寂の獣、その真骨頂……それは言葉を消し去り、言葉によって構築された文化を破壊すること。最終的に全ての言語を消失させ、人間が築き上げた文化を人間自身が認識できなくなるようにする。まさに飛び交う言葉が一つも無くなる、“静寂”の世界……。破壊でも終末でもない、また別の滅亡的結末……」
『その通り。翻訳魔法もプログラミング言語によって、対象の言語をミッド語に一度翻訳し、その後使用者が用いる言語に再び翻訳するソフトウェアがあってのシステム。だけど間に入るミッド語がこの場から消失しているから、ソフトウェアがエラーを起こしてしまう。そもそも“こち
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